■ 引用(出典)
四*
たとい(何者で)あろうとも、親族に対する人の欲望が断たれないあいだは、その人の心はそこに束縛されている。
乳を吸う子牛が母牛を恋い慕うようなものである。
(『ダンマパダ』第18章 第4偈)
■ 逐語訳
- たとえどのような修行者であっても、
- 親族(家族・血縁)への欲望や執着が断たれていないなら、
- その人の心はなおもその関係に縛られている。
- それは、乳を吸う子牛が母牛を恋い慕って離れられないようなものである。
■ 用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
親族への欲望 | 家族や近しい人への情愛・期待・支配欲・承認欲などのこと。 |
束縛 | 執着や未練によって自由な精神状態を損なうこと。 |
子牛と母牛の比喩 | 愛着や依存の象徴。自然な情愛が過度になることで、離れられない状態を表す。 |
たとい…であっても | 外見上、聖者や修行者のようであっても、心が縛られていれば真の自由には至っていないことを示す。 |
■ 全体現代語訳(まとめ)
たとえ表向きにはどれだけ修行者のように見えようとも、家族や身近な人への執着――愛、期待、支配、執念――が残っている限り、その人の心は束縛されている。母牛に執着する子牛のように、そこに囚われ続ける心では、真の自由や解脱には至らないのだ。
■ 解釈と現代的意義
この偈は、家族や身近な人間関係にある「情」の危うさを鋭く指摘しています。愛情そのものを否定しているのではなく、「それに縛られている心」を問題視しているのです。現代においても、親や子、パートナー、部下への過度な期待や感情的依存が、判断を曇らせ、心の平安を妨げる場面は多々あります。愛と執着の違いを見極める力が求められます。
■ ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用の仕方 |
---|---|
人間関係と判断力 | 部下や取引先への「情」に囚われすぎると、適切な判断ができなくなる。距離感と冷静な視点が必要。 |
経営と親族関係 | 家族経営においては、情の入り混じった判断が組織の不健全化を招くことがある。執着を手放す覚悟が重要。 |
マネジメントと感情コントロール | 情報の伝達や評価で「好かれたい」「嫌われたくない」といった心が働くと、組織の健全性が損なわれる。信義に基づいた決断が求められる。 |
■ ビジネス心得タイトル
「愛することと、執着することは違う」
情を持つことは自然なことである。しかし、その情に心を縛られてはならない。真の愛とは、執着から自由な心で相手を見守ること。ビジネスの場でも、冷静な視点と誠実さこそが、信頼と成果の礎となる。
この偈は、見えにくい心の「鎖」を自覚する機会を与えてくれます。
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