■ 引用(出典)
三*
(単に)一つの樹を切るのではなくて、(煩悩)の林を切れ。
危険は林から生じる。
(煩悩の)林とその根とを断ち切って、林(=煩悩)から脱れた者となれ。修行僧らよ。
(『ダンマパダ』第18章 第3偈)
■ 逐語訳
- 単に一本の樹(表面的な欲望)を切るのではなく、
- 欲望の林(すなわち煩悩の集まり)全体を切り倒せ。
- 危険(迷い、苦しみ)はこの林の中から生じる。
- 林とその根(すなわち原因、根本的執着)を完全に断ち切り、
- 煩悩という林から脱した者となれ。
- 修行僧たちよ(比丘たちよ)――。
■ 用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
一本の樹 | 表面的・一時的な欲望や問題の一例。 |
林(ヴァナ) | 多くの煩悩(欲・怒り・無知)を含む集合的執着。 |
根を断ち切る | 表面だけでなく、執着の原因を徹底的に見極め、根絶すること。 |
危険 | 煩悩がもたらす心の動揺・混乱・行動の誤り。 |
修行僧(比丘) | 本来は出家者を指すが、ここでは真理を求める実践者すべてを象徴。 |
■ 全体現代語訳(まとめ)
仏陀は語る――目の前の小さな欲望や課題を断つだけでは不十分である。心の奥底に根を張る煩悩の林そのものを切り倒さなければ、真の自由は得られない。煩悩という林の根まで見抜き、そこから脱した者こそが、真の修行者である。
■ 解釈と現代的意義
この偈は「対症療法ではなく、根治を目指せ」という厳しいが真摯な指針です。表面的な問題処理だけでは、再び似たような問題が生じる――それは根が残っているから。現代においても、課題の真因を突き止め、そこに向き合い、解決する力こそが「智慧」と「解放」を生むのです。
■ ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用の仕方 |
---|---|
問題解決の深さ | 表面的なミス対応や数字合わせではなく、「なぜそれが起きたのか」を根源から分析・改善することが組織改革につながる。 |
組織文化の見直し | 声を上げにくい、責任を避けるといった構造的な問題(林)を見逃さず、根から変える勇気が求められる。 |
自己変革の本気度 | イライラや焦燥感といった「一本の樹」ではなく、「なぜ自分はそう反応するのか」という根本を見つめ、成長する姿勢が重要。 |
■ ビジネス心得タイトル
「問題の根を見よ、林ごと断つ胆力を持て」
一つの課題だけに目を奪われず、背後にある複雑な構造や心の根に向き合うこと。それが真の成長と自由につながる。逃げずに林の中に踏み込み、根を断ち切った先にしか、本物の変化はない。
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