MENU

自己をととのえる者こそ、真の職人


目次

■原文(出典:『ダンマパダ』第十七章 第十偈)

水道をつくる人は水をみちびき、
矢をつくる人は力をこめて(矢を)矯め、
大工は木材を矯め、
慎しみ深い人々は自己をととのえる。


■逐語訳

  • 水道をつくる人は水をみちびき:水の流れを望ましい方向へ導くため、水道職人は巧みに溝を設ける。
  • 矢をつくる人は(矢に)力をこめて矯め:矢師はまっすぐに飛ぶよう、心を込めて矢を整える。
  • 大工は木材を矯め:木を扱う者は、目的に応じて材料を曲げたり整えたりする。
  • 慎しみ深い人々は自己をととのえる:自己を省み、鍛え、正しい方向へと心を導く者こそ、真の修行者である。

■用語解説

  • 水をみちびく(水道工):物事の流れをコントロールする技術と意志の象徴。
  • 矢を矯める(矢師):まっすぐに飛ばすために、曲がった部分を正す。目標に向かって飛ぶ象徴。
  • 木材を矯める(大工):堅く抵抗のあるものを、形あるものに整えていく労苦と技術。
  • 慎しみ深い人(サマナ/賢者):言動・心・行為に注意深く、自らを律し整える者。
  • 自己をととのえる:人格の鍛錬、煩悩の克服、心の平安を得るための努力を意味する。

■全体の現代語訳(まとめ)

水を導く者は溝をつくり、矢をまっすぐに飛ばす者は矢を矯め、木を扱う者は木材を整えるように、
慎み深く生きる者は、自分自身の心と行いをととのえていく。
自分を鍛えることは、何よりも難しく、しかし最も価値ある仕事である。


■解釈と現代的意義

この偈は、自己の鍛錬を「職人の仕事」にたとえている極めて象徴的な教えです。
他人や外のものを整えることよりも、自分自身を調えることのほうが難しく、深い意味を持ちます。
どんな仕事においても、道を極めるには「自己を整える」ことが最初であり、最後の課題なのです。

現代においても、どれだけ技術が進化し、外の世界を操作できるようになっても、
自己の心・判断・行動が未熟であれば、成果は一時的なものに終わってしまいます。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
セルフマネジメントタスク管理やスキル以上に、「感情」「判断」「思考の癖」を整えることが成功の鍵となる。
リーダーの資質部下を動かす前に、自分の内面が整っているか。リーダーはまず、自身の姿勢で信頼を勝ち取る。
プロ意識の根幹職人のように、自分の癖・弱さ・未熟さを知り、丁寧に修正する力が「本物の仕事」を生む。
継続的改善(Kaizen)外的な仕組みよりも、「自己の在り方」の改善が組織の文化や成果を大きく左右する。

■心得まとめ

「自分を整えられない者に、何を整えられよう」

技術や知識は他者から学べる。だが、自分を鍛えることだけは、自分にしかできない。
水を導く者、矢を整える者、木を曲げる者と同じように、
慎み深い者は、自らの心を整え、行いを正し、人生をまっすぐ導く。
最も尊い職人技とは、「自己をととのえる技」なのです。


よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次