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■原文(拠出典)
『ダンマパダ』第十七章「水」第一偈(第91偈)より
こころをとどめている人々は努めはげむ。
かれらは住居を楽しまない。
白鳥が池を立ち去るように、
かれらはあの家、この家を(つぎつぎと)捨てる。
■逐語訳
- こころをとどめている人々:精神が定まり、瞑想や修行に真摯な者たちは、
- 努めはげむ:熱心に実践し、努力を怠らない。
- かれらは住居を楽しまない:安定や所有に執着せず、
- 白鳥が池を立ち去るように:静かに、穏やかにその場を離れるように、
- 家を捨てる:執着を残さず、場所や安楽へのこだわりを手放していく。
■用語解説
- 「こころをとどめる」:散乱する心を静め、瞑想によって一つの対象に集中すること。仏教では「定(サマーディ)」とも。
- 「努めはげむ(ヴィヤーマ)」:精進努力。真理の実現に向けて、怠惰を克服して努力を重ねること。
- 「住居を楽しまない」:所有や安住への執着を持たないこと。物質的安定を目的としない態度。
- 「白鳥が池を離れる」:軽やかに、自然の流れに逆らわず去ることのたとえ。執着のない生き方。
■全体の現代語訳(まとめ)
精神が定まり、真理を目指して精進する者は、世俗の快適さに依存しない。
心を騒がせる欲望や安楽の場を求めることなく、静かに、軽やかに、その場を離れる。
まるで白鳥が水面を優雅に去るように、しがみつくことなく次の歩みに移っていく。
■解釈と現代的意義
この詩句は、執着から離れることで、心の自由と進化が得られることを示しています。
現代社会では、地位・名声・所有・居場所にとらわれがちですが、本質的な成長や悟りは、むしろ「捨てる」ことで拓かれます。
白鳥のように音もなく、後ろ髪を引かれずに次の段階へ移れるか。これは現代においてもなお、生き方の美学と呼べる指針です。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
転職・異動の決断 | 環境や待遇への執着を捨て、成長のために一歩を踏み出す決断ができる人は、しなやかなキャリアを築ける。 |
プロジェクト終了時の姿勢 | 成功したプロジェクトへの愛着を手放し、新たな使命に移る姿は、まさに白鳥の飛翔のようである。 |
自己ブランディング | 場所・役割・肩書に縛られず、価値ある行動を重ねる人が、どこにいても信頼を得る存在になる。 |
ミニマリズム的経営 | 執着を排し、必要最小限に集中することで、経営資源はより本質的な領域に向かう。 |
■心得まとめ
「静かに、潔く、次へ。白鳥のように去る心を持て」
成熟した人は、過去や場所にとどまらず、次の道を知っている。
欲に染まらず、所有に縛られず、軽やかに新たな地へ向かうその姿は、
ビジネスにおいても信頼と影響力をもたらす。
「終える力」が、「始める力」を育てるのです。
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