目次
■原文(一二)
たとい知慧は乏しくても、
修行僧が戒しめを守ってよく心が安定するに至ったならば、
怠ることなく清く生きるその人を、
ことわりを知る賢者たちが称讃する。
■逐語訳
- たとい知慧は乏しくても:たとえ知識や理屈に乏しく、聡明とは言えなくても。
- 戒しめを守って:仏教における戒律(行動の規範)を誠実に守って。
- 心が安定するに至ったならば:内面が落ち着き、煩悩や混乱に乱されなくなっていれば。
- 怠ることなく清く生きる:努力を怠らず、誠実に、正しく生きること。
- ことわりを知る賢者たち:真理を理解し、表面的な知識や名声よりも本質を重んじる人々。
- 称讃する:その生き方を尊敬し、評価する。
■用語解説
- 知慧(ちえ):ここでは主に「知識」「理解力」「理論的理解」を意味する。仏教における真の智慧(般若)とは区別される。
- 戒しめ(戒律):五戒・八戒・十善戒など、行動を正しく保つための指針。
- 心の安定(サマーディ):雑念が鎮まり、清らかな集中と精神の平衡が得られた状態。
- ことわり(理):道理・真理・自然の法。仏教ではダルマ(法)に相当。
■全体の現代語訳(まとめ)
たとえ知識や理論に乏しくても、もしある修行者が戒律を守り、心の平穏と集中を得て、怠らずに清らかに生きているなら――
そのような人こそが、真に真理を知る賢者たちから称賛される。
人が評価されるのは、知識ではなく生き方である。
■解釈と現代的意義
この句は、現代の風潮――「知識・情報がある者が優れている」という価値観に対して、明確な問いを投げかけます。
大切なのは、知っていることではなく、実際にどう生きているか。
多弁な理屈よりも、静かで誠実な実践の方が、他者に信頼され、尊敬される。
現代でも、SNSやプレゼンテーションが上手なだけでなく、**「言ったことを守り、行動で示す人」**が本当に価値ある人間だとされるべきなのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈・適用 |
---|---|
人材評価 | 高学歴・知識豊富よりも、誠実に任務を遂行し、周囲に安心を与える人物が信頼される。 |
リーダーの姿勢 | 話術や戦略よりも、約束を守り、部下に実践で見せる行動力が人を動かす。 |
チームマネジメント | 「できる風」ではなく、「地味でもやり抜く人」を正しく評価できる文化が、組織を育てる。 |
自己成長 | 知識のインプットに偏らず、日常における「誠実な実践」と「心の安定」が、本質的な成長をもたらす。 |
■心得まとめ
「語るより、生きよ。知るより、清くあれ。」
知識は手段であり、人格は行動にあらわれる。
どれほど多くを語れても、守るべきことを守り、日々を清らかに生きる者こそが、最も尊敬される。
ビジネスの世界でも、プレゼンが上手い者より、現場で信頼を積み重ねる者が組織を支える。
人の価値は、声の大きさでなく、行いの誠実さにある。
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