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欲と驕りは、真の道を見えなくする


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■原文(五)

愚かな者はこのように思う。こうして欲求と高慢とがたかまるのである。
利益を得るよすがは、ニルヴァーナにいたる道とは異なっている。


■逐語訳

  • 愚かな者:真理を知らず、自分の欲望や思い込みに従って生きる者。
  • このように思う:自分が正しい、あるいは成功していると思い込む。
  • 欲求と高慢とがたかまる:欲(むさぼり)と驕り(おごり)が増幅していく。
  • 利益を得るよすが:世俗的な成功、物質的な富や名声を得る手段。
  • ニルヴァーナにいたる道とは異なっている:悟り(涅槃)へ向かう本質的な精神修行とは対極にある。

■用語解説

  • ニルヴァーナ(涅槃):煩悩の火が完全に消えた状態。欲望・怒り・無知を断ち、心の平安と解脱を得た境地。
  • 利益を得るよすが:現代では「成功法則」「自己実現のテクニック」など、外面的な成果を求める手段と捉えられる。
  • 高慢(マンナ):自分が他者より優れていると思い上がる慢心。

■全体の現代語訳(まとめ)

愚かな者は、自分の考えが正しいと思い込み、成功や利益を求めて行動する。
その結果、ますます欲望は増し、高慢さも強くなっていく
だが、そうして得た成功や名声の手段は、仏が示した「涅槃(悟り)」へ向かう道とは正反対のものであり、心の自由からは遠ざかるものである。


■解釈と現代的意義

この句は、「自己実現」と「自己超越」を混同してはならないという警告です。
現代では、自己を成長させ、利益を得ることが成功とされますが、それがエゴや欲望から出ていれば、かえって心は不自由になる。
仏教の教えは、「何を得たか」よりも「何を手放したか」に価値を置く。
欲と高慢に導かれる行動は、表面的な成果をもたらすかもしれないが、精神の安寧や本当の自由(ニルヴァーナ)にはつながらないという深い真理を説いています。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点解釈・適用
成功と驕り成果をあげること自体は悪くないが、それを「自分の力」と思い上がると、人間関係や判断力が崩れていく。
モチベーション管理欲望や競争心だけで動く組織は、疲弊しやすく、長期的な信頼や幸福感を失う。
真のリーダーシップ表面的なリーダー像ではなく、謙虚に学び、誠実に仕える姿勢が真の信頼を呼ぶ。
企業文化利益のためにすべてを犠牲にする価値観は、企業の倫理や精神的健全性を蝕む。持続可能な価値は、「徳」によって築かれる。

■心得まとめ

「欲が満たされるほど、心は遠ざかる――真の道は、放棄のなかにある」

どれほど利益を得たとしても、その背後に「我欲」や「傲慢」があれば、それは悟りから離れる道でしかない。
本当に満たされるのは、求めることを手放したときであり、他者と比べず、今あることに感謝できるとき。
ビジネスにおいても、利益だけを追うのではなく、人格・信頼・誠実さを軸に据えることで、組織も人も持続的な幸せを得ることができるのです。

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