目次
📖 原文(第十七章 一七)
つねに善き思考をはたらかせよ。
しかしつねに悪を避けよ。
そうすれば、吹き上げられた塵を雨がしずめるように、
諸の思考と思索とを捨て去るであろう*。
🧩 用語解説と逐語訳
- 善き思考:慈しみ・誠実さ・寛容・正直など、他者にも自分にも害をなさない清らかな心のはたらき。
- 悪を避ける:貪り・怒り・妄想など、心と行いを濁らせる思いや衝動を慎み離れること。
- 吹き上げられた塵:煩悩・妄念・雑念の象徴。感情や衝動により乱れた心の状態。
- 雨がしずめるように:雨が塵を地面に落とし空気を澄ませるように、善き思考と正しい行動が心を鎮めるたとえ。
- 思考と思索を捨て去る:概念・分別・計らいを超えた、直観的な静けさ・明晰さへ至ること(無分別智・禅定の境地)。
✨ 全体の現代語訳(まとめ)
常に善きことを思い、
そして常に悪しきことを避けるように心がけなさい。
そうすれば、塵が風に舞い上がっても、雨がそれを静めるように、
心の中の混乱した思考やこだわりも、やがて自然に消え去っていくだろう。
🔍 解釈と現代的意義
この節は、「日々の思考の質が心の清らかさを決定する」という仏教的な実践法を示しています。
「思考を捨てる」ことがゴールであると聞くと、思考を否定するように聞こえるかもしれませんが、
ここで言う「捨てる」とは、混乱や執着から自由になることです。
そのためには、まず 善い思考の習慣をつくり、悪しき思考の入り口を閉じることが第一歩だと教えているのです。
やがて、善き思考の雨が、心に舞い上がった煩悩の塵を自然に鎮めてくれる――
これは、瞑想や精神統一の基本的プロセスにも深く通じるものです。
💼 ビジネスにおける解釈と応用
観点 | 適用例 |
---|---|
思考習慣のマネジメント | 日々の内省・振り返り・感謝の習慣によって、前向きな思考を強化し、自己破壊的な思考を遠ざける。 |
心理的セルフケア | 怒りや不安などのネガティブな感情を「思考しないようにする」のではなく、善き意識で包み込むように整える。 |
チーム内の空気浄化 | 誹謗・批判・不平といった“悪しき思考の流通”を止め、共感・賞賛・目的意識の共有で心の空気を澄ませる。 |
創造性と集中力の向上 | 思考が整理され、雑念が静まったとき、本来の創造性と判断力が自然に立ち上がってくる。善なる心がその土壌となる。 |
📝 心得まとめ
「善き思いが、心の乱れを沈め、静けさと智慧をもたらす」
混乱した心に対して、「考えるな」「止めろ」と命じても、それは逆効果です。
むしろ、穏やかで善き意識を丁寧に育てることこそが、乱れを鎮める本当の道なのです。
現代のストレス社会においても、「悪を避け、善を想う」というシンプルな修養が、
もっとも効果的なマインドフルネスであり、深い智慧への入口となるのです。
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