目次
📖 原文(第十三章 一三)
生れと老いとの終りを見るこの人は、
ひとびとのためをはかり、慈しんで*、
唯だ一つにおもむく道を語る。
この道によってひとは迷いの激流をすでに渡り終り、
また未来に渡るであろうし、また現在に渡る。
🧩 用語解説と逐語訳
- 生れと老いとの終りを見るこの人:輪廻の苦しみ(生老病死)を超越し、涅槃(解脱)を体得した覚者=仏陀を指す。
- ひとびとのためをはかり、慈しんで:自己の解脱にとどまらず、他者を思いやり、導こうとする大悲(だいひ)の心を持つこと。
- 唯だ一つにおもむく道:真理に至る唯一の道。八正道や中道を含意する。
- 迷いの激流(輪廻の流れ):煩悩・無明・執着などによって流される人生の苦しみや錯覚。
- 渡る(度):サンスクリットの“パーラーヤ”に相当し、「煩悩の海を超える」という意味。解脱を得ること。
✨ 全体の現代語訳(まとめ)
生と老い、つまり人間の避けられない苦しみの終わり(解脱)を見た人は、
その体験と智慧をもとに、他者を深く思いやり、慈しみの心をもって、
ただ一筋の「真理の道」を人々に示す。
その道によって、人はこれまでも、そしてこれからも、
煩悩や迷いの激流を超えてゆくのである。
🔍 解釈と現代的意義
この節は、仏陀の「悟りと慈悲の一致」、そしてその教えの永続的な有効性を表現しています。
仏陀は単に自分が苦しみを終えたのではなく、他者も苦しみから救うために道を語った。
しかもその道は、過去・現在・未来という時空を超えて通用する唯一の救済の道であり、
そこには流行や技術を超えた普遍的な智慧と慈悲があるのです。
これは現代のリーダー像にも深く通じるものがあります。
単なる成功者ではなく、「苦しみを知り、それを超え、他者のために智慧を分かち合う人」こそが真のリーダーなのです。
💼 ビジネスにおける解釈と応用
観点 | 適用例 |
---|---|
リーダーシップの本質 | 自身の経験や失敗を乗り越えた知恵をもって、他者のために道を示す“共感型リーダー”になる。 |
ビジョンの普遍性 | 一時的なブームや流行に惑わされず、時間軸を超えて通用する「価値ある道」を語る組織を目指す。 |
共感と慈悲 | 数字や効率に偏るのではなく、メンバーの成長や幸せを「本気で願う」心が人を導く力になる。 |
変化を導く道標 | 現在の混乱や迷いを超えるには、原則と一貫した価値観に基づく「道」が必要である。その道を示す者が組織に必要。 |
📝 心得まとめ
「苦しみを超えた者は、慈しみをもって道を語る」
真に優れた人とは、自らの痛みと迷いを越えたうえで、他者にその“越え方”を伝える人である。
そしてその教えは、一時の解決ではなく、**時代を超えて有効な“本当の道”**である。
その道に共にあるとき、人は迷いの川を静かに渡ることができる。
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