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📖 引用原文
もしも自分を愛しいものだと知るならば、自分を悪と結びつけてはならない。善いことを実行する人が、楽しみを得るということは、いともたやすいからである。
——『ダンマパダ(法句経)』第5章 第十四句
🧩 逐語訳
- もしも自分を愛しいものだと知るならば、
自分自身を大切にし、幸福を願うのであれば、 - 自分を悪と結びつけてはならない。
不正・欲望・怒りなど、悪しきものと関係を持ってはならない。 - 善いことを実行する人が、
道徳的で思いやりのある行動をする人は、 - 楽しみを得るということは、いともたやすいからである。
そうした善行によって得られる心の満足・喜びは、とても自然に、容易に手に入るものだからである。
🔍 用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
愛しいもの | 大切なもの、守るべき存在。ここでは「自分自身」の尊厳・生命・幸福を指す。 |
結びつける | 行為だけでなく、思考・言葉・関係性・選択の傾向すべてを含む。 |
善いこと | 慈悲、誠実、責任ある行動、他者への配慮、自己鍛錬など。 |
たやすい | 無理なく自然に、心が軽くなるように得られるという意味。 |
🗣 全体の現代語訳(まとめ)
自分のことを本当に大切にしたいと願うならば、
悪しきものに手を出してはいけない。
なぜなら、善き行い――人として誠実であること、
他者に優しさを向けること――それらは、
とても簡単に心に平安と喜びをもたらしてくれるからである。
🧠 解釈と現代的意義
この句は、前句(第十三句)との対照構造になっており、
「悪は楽しみを得がたく、善は楽しみを得やすい」という因果の方向性を明確に示しています。
人はしばしば、「悪いことをすれば楽ができる」「得をする」と思いがちですが、
実際にはその裏に恐れ・後悔・不安が付きまとい、心の深いところでは苦しみます。
一方、善い行いは一時的に損に見えても、心の平安・人との信頼・自己尊重を育てるものであり、
長い目で見ればもっとも「楽」な生き方であるという真理がここに語られています。
💼 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
信頼の形成 | 誠実であることは、一時的に損に見えても、長期的には周囲からの信頼と支持を得る最短ルート。 |
判断基準 | 短期利益を追うより、正しいこと・望ましいことを優先する方が、判断後の後悔も少なく心が軽くなる。 |
メンタルヘルス | 良心に従った行動は、自分自身に対する安心感を育て、ストレス耐性を高める。 |
組織文化 | 「良いことをするのは損」と思わせる文化ではなく、「正しくあることがいちばん楽だ」と感じられる組織が、健全に機能する。 |
🧭 心得まとめ
「善をなす者は、すでに報われている。心が安らかであるからだ」
自分を本当に大切にするとは、苦しみを生まない生き方を選ぶことです。
そしてそのためには、難しいことをする必要はありません。
日々、誠実に生き、善い行いを積み重ねること――それが最も自然で、心にやさしい生き方です。
善は報われる――まず自分の心が報われるのです。
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