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根を断たずして、苦しみは何度でも蘇る


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📜 引用原文(日本語訳)

たとえ樹を伐っても、もしも頑強な根を断たなければ、
樹がつねに再び成長するように、
妄執(渇愛)の根源となる潜勢力を摘出しないならば、
この苦しみはくりかえし現われ出る。
――『ダンマパダ』 第三章「愛執」より(一六)


🔍 逐語訳・語句解説

  • 樹を伐っても:表面的な苦悩や症状を取り除くこと。
  • 頑強な根を断たなければ:根本原因、すなわち執着・渇望・無明を断ち切らなければならないという教え。
  • 再び成長する:原因が残っていれば、苦悩はいくらでも形を変えて再出現する。
  • 妄執(渇愛)の根源となる潜勢力(アーサヴァ):無意識下に潜む煩悩の種子。仏教では「漏(ろう)」とも呼ばれる、根深い存在への渇望。
  • 摘出しないならば:見つけ、気づき、智慧によって断ち切らないならば。
  • 苦しみはくりかえし現われ出る:因果の法則により、同じ苦のパターンが何度でも再生する。

💬 全体現代語訳(まとめ)

たとえ目の前の問題や悩みを解消したとしても、もしその根本にある「執着」や「欲望の根」を断ち切っていなければ、同じような苦しみは再び何度でも現れてくる。
それは、地上に出た木を伐っても、地中に根があればまた芽が出るのと同じことである。
心の奥底に潜む“妄執の根”――それを見つけ出し、完全に断たなければ、苦しみの終わりはない。


🧭 解釈と現代的意義

この節は、仏教実践の根本である「根本原因の断滅(断根)」という視点を私たちに強く促します。

  • 一時的な快楽で悩みを忘れても、根は残る。
  • 表面的な解決策(例えば逃避、気晴らし、感情の抑圧)は、真の解決にはならない。
  • 苦しみの連鎖(輪廻)を本当に止めたいのなら、「なぜ自分はそれに執着するのか」「その欲望の正体は何か」にまで降りていく必要がある。

現代ではこれが「潜在意識の自己分析」「感情トリガーの理解」「深層心理の探求」などに通じ、自己成長とメンタルヘルスの核心テーマとも重なります。


💼 ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
問題の本質に迫るマネジメントトラブルや停滞の“表面処理”に終始すると、同じ問題が繰り返される。原因の「根」を明確化し、組織改革・意識改革を行う必要がある。
執着型意思決定の危険性特定の手法・人物・成果に執着し、それを手放せないと、新たな発想や改革を妨げる「根」となって残り続ける。
個人の感情ループの認識失敗・怒り・不安が何度も同じ形で起こる場合、「根」の感情(承認欲求・比較癖など)を探ることで突破口が開ける。
経営理念と価値観の点検利益重視・競争重視の価値観が「欲望の根」になっていないか。企業文化のリブランディングは、根の見直しから始まる。

🪷 心得まとめ:感興のことば

「苦しみの木を伐るな。
その根を、静かに見つめて抜き取れ。
残った根は、やがてまた芽吹く。
心を鎮めるとは、根を絶つということだ。」

ブッダが語るのは、「対処」ではなく「断根」の道。
すなわち、自分の苦しみを一時しのぎでなく、根底から終わらせる智慧と勇気のことです。
その根は、外ではなく内にある――そして、それを見つけられるのも、自分自身だけです。


この節の教えは、仏教の「四聖諦(苦・集・滅・道)」、特に「集諦(苦しみの原因)」と「滅諦(その終わり)」の関係を体現したものでもあります。

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