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📜 引用原文(日本語訳)
この世において極めて断ち難いこのうずく愛欲のなすがままである人は、
諸の憂いが増大する。
雨が降ったあとにはビーラナ草がはびこるように。
――『ダンマパダ』 第三章「愛執」より(九)
🔍 逐語訳・語句解説
- 極めて断ち難いこのうずく愛欲:人間の内に根深く存在し、断ち切ることが非常に困難な愛着・欲望の衝動。
- なすがままである人:その欲望に流され、抑えることも見極めることもせず、成り行きに任せている者。
- 諸の憂いが増大する:欲望に支配されることで、さまざまな心の悩み・苦しみ・不安が増えていく。
- ビーラナ草:雨が降ると一斉に伸び広がる野草。ここでは、欲望の土壌に憂いが生い茂る様子の象徴。
💬 全体現代語訳(まとめ)
人が欲望の衝動に身を任せ、抑えることも、見つめることもせずに生きているならば、その心には悩みがどんどんと増えていく。それはまるで、雨が降った後に野草(ビーラナ草)が一気に生い茂るように、制御されない愛欲が心の憂いを肥やしてしまうのだ。
🧭 解釈と現代的意義
この節は、**「愛欲を放っておくと、心の中に憂いが増殖する」**という、非常に現実的で警告的なメッセージです。
欲望を「感じること」自体は自然なことですが、それを見つめ、管理する意識がなければ、次第にその欲望は悩みや不安という副作用を伴いながら拡大していきます。
たとえば、人間関係における愛欲、物欲、地位への欲望などは、一時的に快をもたらすかもしれませんが、そのままにしておくと「執着」へと変質し、「失いたくない」「もっと欲しい」「足りない」といった感情が心を支配します。
💼 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
感情の自己管理 | 仕事での評価や成果への「欲」が強すぎると、それが満たされないときに不安・嫉妬・怒りへと変わる。 |
計画なき拡大のリスク | 「もっと売りたい」「もっと広げたい」という欲に任せた事業展開は、のちに経営の歪みや後悔を呼び込む。 |
組織内の心理的安全 | メンバー同士の欲や見栄が放置されると、対立や不信感が生まれ、チーム全体に“心の雑草”が繁茂する。 |
日々のセルフケアの重要性 | 内面に芽生えた「焦り」や「不安」に気づかず放置すると、それが知らず知らずのうちに心の苦しみを増やしてしまう。 |
🪷 心得まとめ:感興のことば
「欲望に水を与えれば、憂いは草のように繁る。
見守り、整えることなくして、静けさは育たない」
この節が示すのは、**「心の環境管理の大切さ」**です。
放っておけば欲は育ち、憂いという雑草を生い茂らせてしまいます。
だからこそ私たちは、日々のなかで心を点検し、「いま何を求めているのか」「その求めは本当に必要か」を見つめ直す習慣が必要です。
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