目次
📜 引用原文(日本語訳)
五、六*
鉄や木材や麻紐でつくられた枷(かせ)を、聖者たちは堅固な縛とは呼ばない。
心が愛欲に染まり、愚鈍な人が妻や子にひかれること――
これが堅固な縛であると、聖者たちは呼ぶ。
それはあらゆる点で極めて堅固であって、脱れ難い。
かれらはこれをさえも断ち切って、顧みること無く、欲楽をすてて、遍歴修行する。
📖 逐語訳(意訳含む)
- 鉄や木材、麻紐でできた物理的な束縛を、賢者(聖者)は真の「縛」とは見なさない。
- 心が愛欲に染まった愚かな者が、妻や子、家庭的な愛着にとらわれる――
- それこそが、本当の束縛であると彼らは説く。
- それは目に見えぬが、非常に強く、逃れることが難しい。
- しかし修行者は、それさえも断ち切って執着を捨て、真理を求めて遍歴する。
🧩 用語解説
- 枷(かせ):自由を奪う拘束具。比喩的には、物理的な制限。
- 縛(ばく):自由を束ねるもの。仏教では煩悩や執着による心の拘束を指す。
- 愛欲:愛着や欲望。特に家族や近しい対象への強い執着。
- 遍歴修行(へんれきしゅぎょう):一所不住で各地を巡りながら真理を探究する求道生活。
- 顧みること無く:未練や迷いを持たず、振り返らずに進むこと。
🪞 全体の現代語訳(まとめ)
外的な拘束(鉄や縄など)よりも、心に生じる愛欲や執着の方が、はるかに人を縛る力が強い。特に、家族や身近な存在に対する愛着は美徳のように見えても、悟りを妨げる根深い縛になり得る。真に自由を求める者は、それすらも断ち切って歩む。それが真の解放の道である。
🧠 解釈と現代的意義
この章句は、「目に見える制限」ではなく、「見えない執着」こそが真の束縛であることを教えています。家族愛や情の深さは尊いものである一方で、それに縛られて真理や自立から遠ざかるならば、心の自由を損なう“枷”にもなり得るという警鐘です。現代においても、「自分を縛るものは他人や環境ではなく、自分の内なる執着である」という視点は、自己の成長において極めて重要です。
💼 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 応用例 |
---|---|
心の縛り | 昇進や役職、名声への執着が、自分の行動を制限する「見えない鎖」となっている。 |
人間関係の執着 | 好かれたい・裏切られたくないといった感情が、言うべきことややるべき行動を妨げる。 |
コンフォートゾーン | 家族的・組織的安定を手放したくないという思いが、挑戦や転機の足を引っ張る。 |
真のリーダーシップ | 執着なく行動する人は、困難な決断も迷いなく下せる。結果として周囲から信頼される存在になる。 |
🧭 心得まとめ(座右の銘風)
「鎖は鉄ではない。心にある。」
外的な障害よりも、内なる執着こそが人を縛る。
手放すべきは環境ではなく、心のなかの執着である。
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