目次
引用原文(現代語訳)
この世においては、過去にいた者どもでも、未来にあらわれる者どもでも、
一切の生き者は、身体を捨てて去っていくであろう。
智ある人は、一切を捨て去ることを知って、
真理に安住し、清らかな行ないをなすべきである。
逐語訳と用語解説
表現 | 解釈・補足 |
---|---|
過去にいた者・未来にあらわれる者 | いかなる時代の生命体でも、例外なく生死の流転にあるという普遍性の示唆。 |
身体を捨てて去る | 死を迎えて肉体を離れること。仏教では「五蘊(ごうん)」のうち、色(=身体)は壊れるもの。 |
一切を捨て去ることを知る | 所有物・関係・肉体すら手放さねばならないと理解する智慧(般若)。 |
真理に安住する | 無常・無我・縁起など、仏法の根本原理に照らして心をとどめること。 |
清らかな行ない | 五戒や八正道に基づいた、誠実で徳のある生き方。 |
全体の現代語訳(まとめ)
この世に生まれた者は、過去の人も、これから来る人も、
すべて最終的には身体を捨ててこの世を去る。
この事実を知る智ある人は、
執着すべきものが何一つないことを悟り、
真理に基づいた心の平安を得て、
清らかで誠実な行いをもって人生を生きるべきである。
解釈と現代的意義
この偈は、「死すべき身に生きている」という事実を前提にした智慧ある生き方を提示しています。
身体は必ず朽ちる――だからこそ、それに執着せず、「何を持って死ぬか」ではなく「どう生きたか」を重視すべきだという指針です。
そして智者とは、その真理を静かに受け入れ、そのうえで「今できる最善の行為=清らかな行動」を日々積み重ねる人間を指すのです。
ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 実践的な適用例 |
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物質や肩書への執着を超える経営哲学 | 成功・報酬・所有を追い求めるのではなく、「何を社会に残せるか」という視点に立つ。 |
有限の時間に価値を置く働き方 | 不死身ではないことを前提に、後悔のない「1日1選択」を意識する。 |
内面と行動の一致 | 見かけではなく、真理を理解したうえで、誠実・謙虚・持続可能な行動を日々行う。 |
組織文化としての“脱・所有” | 「モノ・地位」ではなく、「信頼・貢献・行動」に価値を置く文化を育てる。 |
心得まとめ(感興のことば)
「やがて去る身体に、何を刻んで生きるか」
過去の人も、未来の人も、
この世のすべての命ある者は、
いつかその身体を捨てて去っていく。
そのことを知る智者は、
この世のものに執着せず、
真理に心をとどめ、
一日一日を、清らかな行いで満たしてゆく。
それが、死を恐れずに生きる智慧であり、
生を豊かにする最も確かな道である。
この偈は、**仏教的な死生観と「倫理的な実践の価値」**を結びつける非常に重要な教えです。
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