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■引用原文(日本語訳)
牝牛のように雄々しく、
気高く、英雄・大仙人・勝利者・欲望の無い人・沐浴者・覚った人(ブッダ)――
かれを、われは〈バラモン〉と呼ぶ。
(『ダンマパダ』第422偈|第二六章「バラモン」)
■逐語訳と語義
- Usabho’va sujāto:「牝牛(=ウシの中の雄)に似て気高く生まれた者」
- Hero vicittavādī:「英雄にして、すぐれた真理を語る者」
- Isi yasassī:「大仙人、名声ある聖者」
- Anāsavo:「煩悩の漏れなき者=阿羅漢」
- Vantadoso:「あらゆる罪過・汚れを捨て去った者」
- Snato:「聖なる沐浴を終えた者=清められた者」
- Buddho:「目覚めた者(ブッダ)」
- Tam ahaṃ brūmi brāhmaṇaṃ:「そのような者を、私は〈バラモン〉と呼ぶ」
■用語解説
- 牝牛のように雄々しく(Usabho’va):群れの中でもっとも強く、群を導く牛。威厳と力の象徴。
- 英雄(hero):内なる煩悩を制し、自らの弱さを乗り越えた真正の勝利者。
- 大仙人(isi):世間の価値を超えた智慧者・修行完成者。
- 欲望の無い人(anāsavo):煩悩という「漏れ」が完全に塞がれた悟りの人。
- 沐浴者(snato):ここでは単なる水浴びではなく、煩悩を洗い清めた象徴。
- 覚った人(buddho):目覚めた者。仏陀。最高の智慧を得て目覚めた存在。
■全体の現代語訳(まとめ)
牝牛の中でもっとも気高く、堂々と生まれ、
英雄のように勇敢に、
大仙人のように智慧にあふれ、
すべての煩悩を超えて、
完全に浄められた目覚めの人――
そのような者を、
仏陀は〈バラモン〉と呼ぶ。
■解釈と現代的意義
この偈は、外的な肩書や出自ではなく、**「内面からの完全なる成熟」**を成し遂げた人物だけが真の〈バラモン〉であると説いています。
彼はもはや誰かと競う必要すらなく、自分自身の心との戦いに勝った人です。
沐浴とは形式的な儀式ではなく、**「自己浄化」**の象徴。
英雄とは、他者に勝った者ではなく、煩悩・怒り・執着といった内なる敵に勝利した者です。
これこそが、世間では得られない真の名誉であり、自由です。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
精神的リーダーシップ | 見せかけの強さではなく、自己統御に優れた人は、本当の意味で組織を導ける。 |
自浄力と成長 | 失敗や慢心を洗い流し、日々内面を清め続ける人は、信頼され続ける。 |
真の英雄像 | 他者を蹴落として勝つのではなく、過去の自分や欲望に克って前に進む人が、持続的な成果を上げる。 |
覚者的プロフェッショナリズム | 経験や知識だけでなく、静かでぶれない判断力・姿勢が、周囲に信頼と尊敬を与える。 |
■心得まとめ
「心に勝てば、世界に勝てる」
見かけの強さではない。
語る言葉の巧みさでもない。
真の英雄とは、
欲望を超え、自らを制し、智慧に目覚めた人である。
煩悩を洗い流した清らかな人は、
誰とも争わず、
誰よりも深く、
自分の道を歩む。
それが、仏陀の語る〈バラモン〉――
**「内なる浄めを終え、静かに勝利した覚者」**なのです。
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