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快にも不快にも動じぬ、心涼しき勝者


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■引用原文(日本語訳)

〈快楽〉と〈不快〉とを捨て、
清らかに、涼しく、
とらわれることなく、
全世界にうち勝った英雄――
かれを、われは〈バラモン〉と呼ぶ。

(『ダンマパダ』第418偈|第二六章「バラモン」)


■逐語訳と語義

  • Yo sukhañca dukkhañca pahāya:「快と不快の両方を捨てた者」
  • Atāpaṃ, sītaṃ, anupādānaṃ:「熱くもなく、冷たくもなく、とらわれがない(=平静の境地)」
  • Samaṃ, lokaṃ abhiññāya:「世界を等しく見通し、理解し」
  • Jitindriyo:「感官を制して勝利した者(感覚の英雄)」
  • Tam ahaṃ brūmi brāhmaṇaṃ:「その者を、私は〈バラモン〉と呼ぶ」

■用語解説

  • 快(sukha)・不快(dukkha):心地よさ・つらさ。五感や思考から生まれる感覚の両極端。
  • 捨てる(pahāya):手放すこと。感情への反応や執着を離れること。
  • 涼しい(sīta):仏教では怒り・貪りがない涅槃的な心の状態を象徴する語。
  • とらわれがない(anupādāna):何ものにも執着せず、心が静まっていること。
  • 世界にうち勝った英雄(jitindriyo):感官を超え、内的世界の誘惑に勝利した真の勝者。

■全体の現代語訳(まとめ)

快いことにも、つらいことにもとらわれず、
心は清らかで静まり、熱くも冷たくもない――
何ものにも執着せず、
内なる感覚の誘惑を克服して、
この世界に打ち勝った人――
そのような人こそ、仏陀は〈バラモン〉と呼ぶ。


■解釈と現代的意義

この偈は、**「感情に揺れ動かされない心」こそが真の強さであることを説いています。
喜びや悲しみ、成功や失敗、称賛や批判といったものに心が大きく動いてしまうのが普通の人間ですが、仏教ではそれらもまた
「一時的な現象=無常」**であり、執着すべきでないと教えます。

「熱くもなく、冷たくもない」状態は、怒りにも喜びにも溺れない、真に涼やかな心のことです。これは鈍感さではなく、深い智慧と集中によって生まれる中庸の境地を指します。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
結果に一喜一憂しない安定感売上や反応に左右されず、長期的な視野で淡々と実行する姿勢が組織を安定させる。
批判・賞賛に動じないリーダーシップ外部の評価に振り回されることなく、軸を持って判断できる人物は信頼される。
内面的な熱狂や焦りの制御焦燥感や過信に流されず、冷静に判断・行動できる力が、プロジェクトの成功に寄与する。
精神的セルフマネジメント感情起伏の激しい現場でも、自分の感情を見守り、整える力が、継続的成果につながる。

■心得まとめ

「喜びに舞わず、悲しみに沈まず――涼しき心が真の強さ」

うれしいときも、
かなしいときも、
人は感情に流されやすい。

だが、
感情の波に飲み込まれず、
静かに、清らかに、
そのままの今に在る。

それは逃避ではなく、
恐れでもなく、
**「勝ち抜いた静けさ」**である。

快にも、不快にも、動じない心――
その涼しさが、
真に成熟した〈バラモン〉の姿なのです。

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