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■引用原文(日本語訳)
この世の欲望を断ち切り、
出家して遍歴し、
欲望の生活を終えた人――
かれを、われは〈バラモン〉と呼ぶ。
(『ダンマパダ』第415偈|第二六章「バラモン」)
■逐語訳と語義
- Yo kāme pahāya:「この世の欲望(kāma)を捨てた人」
- Anagāriyo:「出家した者(家庭や所有を離れた者)」
- Paribbajati:「遍歴する者、世を離れて放浪し修行する人」
- Kāmabhavaparikkhīṇo:「欲望に根差した生き方を終えた人」
- Tam ahaṃ brūmi brāhmaṇaṃ:「その人を、私は〈バラモン〉と呼ぶ」
■用語解説
- 欲望(kāma):五欲(色・声・香・味・触)に代表される世俗的な快楽・執着
- 出家(anagāriya):「家なき者」とも訳され、家族・財産・社会的義務などを放棄した修行者の状態
- 遍歴(paribbajati):特定の場所や地位にとどまらず、真理を求めて放浪すること
- 欲望の生活を終えた人(kāmabhava-parikkhīṇo):欲に根ざした生存条件を断ち切り、内面的な自由を得た者
■全体の現代語訳(まとめ)
この世の欲望を完全に断ち切り、
家や地位を離れ、世俗の道を去って放浪し、
欲望を源とする生き方を終えた人――
そのような人を、仏陀は〈バラモン〉と呼ぶ。
■解釈と現代的意義
この偈が示すのは、物質的な欲望や世俗の束縛を乗り越えた者こそが、精神的に真に自由であるということです。
単に外面的に出家するという意味ではなく、内面的に執着から離れた状態に重きが置かれています。
現代社会においては、物理的な出家は難しいかもしれません。しかし、この教えは、「欲望の奴隷にならずに生きる」という生き方を、誰にでも適用できる形で説いています。
「何かを得なければ価値がない」「他人に認められなければならない」といった心の渇きから解放されることで、初めて人は本当に自由になれるのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
過剰な欲望に振り回されない姿勢 | 地位や報酬を求めすぎるあまり判断が鈍ることを防ぐ。使命や価値に基づいて行動する強さを持つ。 |
変化に対応できる柔軟性 | 所有や立場に固執せず、環境やキャリアの変化にしなやかに対応できるリーダーシップ。 |
ミニマリズムと集中力 | 不要なものを断ち、必要なことに集中することで、シンプルかつ高効率な業務遂行が可能になる。 |
自己の充実からの行動 | 欲による動機ではなく、内面的な充実から発せられる行動は、深く人を動かす力を持つ。 |
■心得まとめ
「欲を離れてこそ、真の自由が始まる」
人は多くのものを欲し、
それを得ることで満たされると思っている。
だが、本当の自由は、
「得ること」ではなく、
「欲から離れること」にある。
執着を離れ、自由に歩む者――
それが〈バラモン〉、すなわち
真に成熟した、内的に完成された人間なのです。
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