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■引用原文(日本語訳)
バラモンよ、流れを断て。勇敢であれ。欲望を捨てよ。現象の消滅(=無常)を知り、作られざるもの(=ニルヴァーナ)を悟れ。
(『ダンマパダ』第383偈|第二六章「バラモン」)
■逐語訳
- バラモンよ(Brāhmaṇa):精神的に純化された人よ
- 流れを断て(Sotaṃ chinda):煩悩の流れを断ち切れ
- 勇敢であれ(Sītaṃ brūhi):ためらわず決然と行動せよ
- 欲望を捨てよ(Kāme pahāya):感覚欲を放棄せよ
- 現象の消滅を知れ(Aniccasaññī):万物は無常であると洞察せよ
- 作られざるものを知れ(Nibbānaṃ arahāsi):ニルヴァーナ(不生不滅の境地)を目指せ
■用語解説
- バラモン(Brāhmaṇa):カースト的な意味ではなく、ここでは「真理に到達した者」「自己を克服した聖者」を意味します。
- 流れ(Sota):煩悩や執着の流れ。生死の連鎖(サンサーラ)を象徴します。
- 欲望(Kāma):五欲(色・声・香・味・触)に対する執着。心を乱す根本原因。
- 現象の消滅(Anicca):すべての存在は無常であり、執着に値しないとする仏教の核心思想。
- 作られざるもの(Nibbāna/ニルヴァーナ):因縁によって生じることのない、絶対的な静寂と解脱の境地。
■全体の現代語訳(まとめ)
悟りを志すすべての者に向けて、仏陀は「煩悩の流れを断ち切れ」「欲望を捨てよ」と呼びかけています。そして、あらゆるものが移ろいゆくと知ることで、変化しない唯一の真実、すなわちニルヴァーナ(涅槃)に到達せよと説いているのです。
■解釈と現代的意義
この偈文は、私たちの心が「欲望」や「執着」に流されるままでは、真の自由や平安を得ることはできないという警鐘です。現代社会では、物質的な豊かさや刺激が「欲望の川」として絶えず私たちを飲み込みます。そのような中でも、心を律し、自らの中にある静寂に立ち返る勇気が求められているのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
欲望と成果主義 | 過剰な成果欲・承認欲求がストレスや不正を生む。成功に執着するよりも、原理原則に従うことで持続的な成果が得られる。 |
覚悟とリーダーシップ | 真に組織を導くリーダーは、流されるのではなく、流れを断ち切る者である。断つべきを断つ勇気が組織の方向性を決める。 |
変化の本質理解 | すべてのビジネス環境は「無常」であることを認識し、執着せず変化に柔軟であることが生存戦略となる。 |
目的と価値基準 | 目先の報酬ではなく、崇高な目標や顧客価値の創造を志向する姿勢が、本質的なブランド価値を築く。 |
■心得まとめ
「欲望に流されるな。変化の中で、不動の真理に到れ」
本当の自由とは、外から与えられるものではなく、内から築かれる静けさである。
目まぐるしく変わるビジネスの世界でも、自らの軸を持ち、煩悩や執着から離れることができる者が、真の創造者となる。
涅槃とは遠くにある理想ではない。いまこの瞬間の“執着なき実践”の中にこそ、それはあるのだ。
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