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自分の一椀を誇りにせよ、他人の器に心を奪われるな


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📖 原文引用(『ダンマパダ』第二五章 第365偈)

(托鉢によって)自分の得たものを軽んじてはならない。
他人の得たものを羨むな。
他人を羨む修行僧は、心の安定を得ることができない。

(原文:
Na tena hīno paresaṃ,
piṇḍena parihāyati.
Maññeti bhikkhu piṇḍena,
piṇḍapātaṃ na passati.

―『Dhammapada』Ch. 25, v.365)


🔍 逐語訳(逐文・簡潔)

  • Na tena hīno paresaṃ:他人と比較して、自分は劣っていると思うべきではない。
  • Piṇḍena parihāyati:托鉢の施しの量によって価値が決まるわけではない。
  • Maññeti bhikkhu piṇḍena:修行僧が他人の施しを羨むならば、
  • Piṇḍapātaṃ na passati:彼は真の托鉢(の意味)を理解していない。

📘 用語解説

  • 托鉢(piṇḍapāta):修行僧が鉢を持って食を乞う仏教修行の一形態。食事の多少に意味はなく、「受け取る心」が大切とされる。
  • 羨む(maññeti):他人のものと比較して自分を卑下し、妬みや不足を感じる心。
  • 心の安定(samādhi):ここでは精神集中や安定した心の境地を意味する。嫉妬や比較心はそれを乱す。
  • 軽んじてはならない(na parihāyati):得られたものを粗末に思ったり、不満に感じることを戒めている。

🗣️ 全体の現代語訳(まとめ)

托鉢で得た施しが少ないからといって、それを卑下してはならない。
他人が得た多くの施しを羨んではならない。
他人を羨む心を持つ修行者は、心を静めることができず、真の意味での修行から離れてしまう。


🧭 解釈と現代的意義

この偈は、「他人との比較に心を奪われることの危うさ」を端的に説いています。
現代人は常に「他人の成果」「他人の暮らし」「他人のSNS」を目にし、自分の状態をそれと比べて評価しがちです。
しかし、仏教はこう教えます――「今、与えられたものに満足できない者は、どれだけ得ても満たされない」

他人を羨むことは、心の穏やかさと集中力を失わせ、自己の尊厳と修行の道を損なう原因となります。


💼 ビジネスにおける解釈と応用

観点応用・実践例
報酬・成果評価他者の昇進や収入と比較せず、自分の現在の役割に誇りと価値を見出す視点を育む。
嫉妬心の克服他人の成功に心を乱すのではなく、「自分が果たすべきこと」に集中する力を持つ。
モチベーション管理外的要因(報酬・称賛)ではなく、内発的動機(使命感・成長意欲)に基づく行動を重視する。
組織の健全性比較ではなく感謝を育む文化をつくることで、メンバー同士の協力と安心感を高める。

🧠 心得まとめ(ビジネスパーソン向け)

「他人と比べて卑下する者は、自分を見失う。自分の器に感謝する者は、心を保ち、道を進める。」
得たものが少なくとも、それはあなたに必要なものである。
他人の器を羨んで心を乱すよりも、自分の一椀に誠実であれ――それが、プロとしての第一歩である。


この偈は、比較・競争・嫉妬といったビジネスや現代社会に蔓延する精神の毒に対する、深い処方箋でもあります。

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