目次
■引用原文(日本語訳)
第二三章 象(三二二)
馴らされた騾馬は良い。インダス河のほとりの血統よき馬*も良い。
クンジャラという名の大きな象*も良い。
しかし自己をととのえた人は、それらよりもすぐれている。*インダス河流域は名馬の産地として知られた。
*「クンジャラ」は特に力強く高貴な象の象徴的名。
■逐語訳
- 馴らされた騾馬は良い:よく訓練された騾馬(ラバ、馬とロバの交配種)は有用である。
- インダス河の血統よき馬も良い:名高い名馬(高貴な血統)もまた優れている。
- クンジャラという象も良い:堂々とした名象もまた素晴らしい。
- しかし自己をととのえた人:しかし、自己を律し、制御できる人物は。
- それらよりもすぐれている:あらゆる動物よりも、その価値において上回っている。
■用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
騾馬(らば) | 働き者として知られる実用的な動物。頑健で重労働に適している。 |
インダス河の馬 | 古代インドでは名馬の産地。スピードと気品の象徴。 |
クンジャラ | 優雅さと力強さを備えた名象の代表的呼称。高貴な存在の比喩として用いられる。 |
自己をととのえた人 | 心と行いを整え、内面を制御した修行者・人格者。 |
■全体の現代語訳(まとめ)
よく調教された騾馬も、インダスの名馬も、クンジャラと呼ばれる堂々たる象も、それぞれに優れてはいるが、これらよりも遥かに価値ある存在は、自己を制し、心を整えた人間である。
■解釈と現代的意義
この節では、どれほど優れた動物であっても、それを超える存在は「自己を制御できる人間」であると説かれます。
物理的な力、スピード、品位といった動物の長所を並べながらも、それらはあくまで外的価値に過ぎず、仏教が重視するのは「内面の統御」に他なりません。
現代においても、学歴・実績・地位といった「外の能力」よりも、誠実さ・自制心・心の安定といった「内の力」が信頼と尊敬の源となるという、普遍の真理を示しています。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
能力 vs 人間性 | スキルや経歴が優れていても、謙虚さや誠実さを持たない人は信頼されない。 |
内面の品格 | 表面的な成果よりも、危機や混乱時に表れる「内面の安定性」が真価を問われる。 |
採用・育成の視点 | 技能だけでなく、感情管理・謙遜・協調性といった心の成熟度を重視すべき。 |
リーダー像 | リーダーに必要なのは「戦える力」よりも「人を受け止められる心」である。 |
■心得まとめ
「人の価値は、心の静けさによって決まる」
どれほど能力に秀でていても、自己を制御できなければ真に優れた存在とはいえない。
ビジネスにおいても同様に、成果よりも「どういう心でそれを成したか」が人間性を映す鏡となる。
優れた乗りもののように人を運ぶ力があっても、最も価値あるのは「自らを運転できる人間」である。
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