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■引用原文(『ダンマパダ』第二一章 第二九一偈)
他人を苦しめることによって自分の快楽を求める人は、怨みの絆にまつわられて、怨みから免れることができない。
――『ダンマパダ』 第二一章 第二九一偈
■逐語訳(一文ずつ訳す)
- 「他人を苦しめることによって」
――他者に損害や痛み、苦悩を与える手段で、 - 「自分の快楽を求める人は」
――自分だけの喜びや満足を得ようとする者は、 - 「怨みの絆にまつわられて」
――恨みの連鎖に絡め取られ、 - 「怨みから免れることができない」
――その因果から逃れることはできない。
■用語解説
- 他人を苦しめる:
直接的な加害行為だけでなく、搾取・誹謗中傷・不正・無関心といった、相手の立場を軽んじた行為全般を含む。 - 自分の快楽を求める:
一時的な利益・優越感・満足・承認欲求など、自分本位の幸福。 - 怨みの絆(えんのきずな):
カルマ的な縁の束縛。因果関係によって繰り返される負の連鎖、憎しみや報復心の渦。
■全体の現代語訳(まとめ)
他人を傷つけてでも自分が快楽を得ようとする者は、結果的に怨みを買い、その恨みから逃れることはできない。
短期的には成功や満足を得るように見えても、それは必ず「報い」として本人のもとに返ってくる。慈しみなくして、真の幸福は成立しない――という因果律の教えである。
■解釈と現代的意義
この偈は、「自分さえよければ」という行動が必ず巡り巡って自分に不利益をもたらす、という深い倫理的洞察を含んでいます。
現代社会では、競争や自己主張が重視されがちですが、その過程で他者を踏みにじるような行為があれば、それは個人の信頼や社会的信用を損ね、最終的に大きな損失となって跳ね返ってくるのです。
「利己心は孤立を生み、利他心は繋がりを生む」――これが現代にも通じる仏教の智慧です。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
利己的な戦略の危険性 | 社内政治や足の引っ張り、顧客を軽視した営業は、一時的な成果があっても、組織や信用を蝕む。 |
社員マネジメント | パワハラ・圧政的な管理は短期的な成果を生むことがあっても、組織に恨みや退職者の波を生み長期的損失へ。 |
顧客対応 | クレームを「処理」する姿勢ではなく、「誠意」で応じなければ、ブランドへの不信と炎上リスクが残る。 |
真のリーダーシップ | 部下や取引先を犠牲にしない判断が、信頼を呼び、長期的に組織を守る結果となる。 |
■心得まとめ
「他者の痛みの上に築いた幸福は、やがて崩れ去る」
一瞬の利益のために誰かを傷つけたとき、
その報いは、形を変えて自らに返ってくる。
真の成功とは、他者の幸せと調和した結果として得られるものであり、
誰かを犠牲にすることで得られた快楽は、永遠には続かない。
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