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未来ばかりを案じて、今を見失うな


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■引用原文(ダンマパダ 第二〇章「道」第286偈)

「わたしは雨期にはここに住もう。冬と夏とにはここに住もう」
と愚者はこのようにくよくよと慮って、死が迫って来るのに気がつかない。


■逐語訳

  • 愚かな者は、「雨期にはこの地に住み、冬にはあそこ、夏にはここに住もう」などと、
  • 将来のことばかりを思い悩み、思案し続ける。
  • しかしそのあいだにも、死(無常)は確実に迫っていることに気づかない。
  • 未来への執着と妄想にとらわれ、今ここにある現実を見失っている。

■用語解説

用語解説
雨期・冬・夏の住処出家修行者が年中の住処を考える様子を示すが、比喩的には「将来の快適さや安全を計画すること」の象徴。
愚者(バーラ)真理に気づかず、無常・死・因果の理解が浅い者。
くよくよと慮る過剰な思慮、杞憂、空想的な未来設計。行動ではなく妄想に留まる思考状態。
死が迫る無常なる現実、生の有限性。避けられない死が近づいているという真理。

■全体の現代語訳(まとめ)

愚かな者は、先のことばかりを考え、「雨期はここに住み、冬にはそこに行き、夏には別の場所で…」と未来のことに心を奪われる。
だがそのあいだにも、確実に死――つまり人生の終わり――は近づいており、それに気づこうともしない。
この偈は、「未来を心配しすぎて“今”を生きていない」という現代的な心の迷いを鋭く指摘している。


■解釈と現代的意義

この偈は、「将来の準備に追われすぎて、今という瞬間を見失う」現代人にとって極めて重要な警告です。
人生は無常であり、どれだけ計画しても思い通りにはならない。
にもかかわらず、「いつかの安定」や「あとでの安心」を求めて、目の前の行動や気づきをなおざりにする――それが愚かさであると仏陀は説きます。

仏教は「今、この瞬間の気づき(サティ)」にこそ真理が宿ると教えます。
それは、時間だけでなく、エネルギー・命・信頼といったリソースすべてに対してもあてはまります。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点応用例
過剰な計画主義の罠長期戦略や事業計画に囚われすぎて、「今、目の前で起きている変化」や「現場の課題」に鈍感になる。
先延ばし癖のリスク「いつかやる」「準備が整ったら始める」と考えている間に、機会(タイミング)や信頼を失う。
マインドフルネスの必要性過去や未来にとらわれるのではなく、「今ここ」に集中して判断・行動する力が、リーダーや個人の成熟を支える。
命と時間の有限性自分や仲間の人生の有限性に目を向けることで、無駄な議論や惰性を捨て、「本当に価値のある仕事」に集中できる。

■心得まとめ

「先のことばかりを思い描いて、“今”を失っていないか?」
どれだけ計画しても、命には終わりがある。だからこそ、「今ここ」でできることに目を向け、迷わず一歩を踏み出そう。
本当に大切なのは、将来の保証ではなく、“今という瞬間の誠実な実践”である。

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