目次
📜 引用原文(『ダンマパダ』第十九章 二七〇)
生きものを害うからとて〈聖者〉なのではない。
生きとし生けるものどもを害わないので〈聖者〉と呼ばれる。
📝 逐語訳
「たとえ宗教的な立場にあっても、
もし生きものを傷つけるような者であれば、
その人は〈聖者〉とは呼べない。
一切の生きとし生けるものを害することのない者こそが、
真に〈聖者〉と呼ばれる。」
📖 用語解説
用語 | 意味 |
---|---|
生きもの(サッタ) | すべての生命ある存在。人間だけでなく動物・虫・微生物までも含む。 |
害う(ヒンサー) | 肉体的・精神的に傷つける行為。攻撃・暴言・無視・虐待など広義に解釈される。 |
害わない(アヒンサー) | 非暴力・無害の実践。他者の命や尊厳を侵さない態度。 |
聖者(ムニ) | 真理を体得し、慈悲と智慧に生きる修行者。外見ではなく心と行動で評価される。 |
🌏 全体の現代語訳(まとめ)
聖者とは、暴力や傷つける行為を行う者ではない。
いかなる存在に対しても害を与えず、
慈しみの心を持ってすべての命を大切にする者――
そのような人こそが、本当の意味での〈聖者〉と呼ばれるにふさわしい。
🔍 解釈と現代的意義
この偈は、仏教の根幹である「アヒンサー(非暴力)」の精神を力強く示しています。
人はときに「正義の名のもとに他者を攻撃する」ことすらありますが、
たとえ名目や立場が立派であっても、他者を傷つける行為に正義はないというのが仏教の立場です。
現代においても、言葉の暴力、SNSでの誹謗中傷、権威の濫用、職場でのマイクロアグレッションなど、
さまざまな「害し方」があります。
これらに無自覚であることは、修養の不足を意味します。
逆に、すべての命に思いやりを持って接する姿勢こそが、真の尊敬を集める人格です。
💼 ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈・適用 |
---|---|
心理的安全性 | 怒鳴らず・侮辱せず・嘲らず――他者の尊厳を守ることで、健全な職場文化が育まれる。 |
人材育成の姿勢 | 指導は厳しさよりも「信頼と慈しみ」で行うことで、より深く人を育てられる。 |
権限の使い方 | 上司であっても、パワーを行使して他者を屈服させるのではなく、守るために使うべき。 |
ブランド価値 | 顧客や社会に対しても、搾取的・攻撃的でない姿勢が、持続可能な信頼と支持を生む。 |
🧠 心得まとめ(ビジネス向け)
「優しさこそが、真の強さ」
他者を害する言動は、どんなに正当化しても聖ではない。
真の聖者――そして真のリーダーとは、
力を誇る者ではなく、力を持ちながらもそれを慎み、
すべての命を敬い、守ろうとする者である。
現代社会でも、非暴力と慈しみの姿勢が、
本質的な信頼と影響力を築く鍵となるのです。
コメント