目次
■引用原文(日本語訳)
第一七章 怒り(二二九)
もしも心ある人が日に日に考察して
「この人は賢明であり、行ないに欠点が無く、
知慧と徳行とを身にそなえている」といって称讃するならば、(二三〇)
その人を誰が非難し得るだろうか?
かれはジャンブーナダ河から得られる黄金でつくった金貨*のようなものである。
神々もかれを称讃する。梵天*でさえもかれを称讃する。
*ジャンブーナダ河:神話上の聖なる川。そこから採れる黄金は純粋で最高のものとされる。
*梵天:創造神であり、宇宙的秩序を保つ存在。最高位の神のひとつ。
■逐語訳
- もしも心ある人が日に日に考察して…
→ 注意深く善悪を見分ける賢明な人が、日々観察を重ねた上で、 - 「この人は賢明であり、行ないに欠点が無く…」
→ 判断するに、その人が知恵深く、行動にも乱れがなく、 - 知慧と徳行とを身にそなえている」と称讃するならば、
→ 知識と道徳の両方を備えた立派な人だと認められるならば、 - その人を誰が非難し得るだろうか?
→ そのような人を、誰が批判できるというのだろうか? - ジャンブーナダ河の黄金でつくられた金貨のようである。
→ それは最高純度の金のように、光り輝く存在である。 - 神々も称讃し、梵天さえも称讃する。
→ 天界の存在たちすら、その人を讃えるに値すると認める。
■用語解説
- 心ある人(パンディタ):思慮深く、物事を深く観察する知者。真の価値を見抜く力を持つ。
- 知慧(パンニャー):仏教における知恵。単なる知識ではなく、真理を見抜く智慧。
- 徳行(シーラ):倫理的な行い、道徳の実践。五戒や八正道の実践を指す。
- ジャンブーナダ河の黄金(金貨):完全無欠な高潔さの象徴。真に価値ある人格を示す比喩。
- 梵天(ブラフマー):宇宙の秩序を司る存在。仏教では最高次の道徳的象徴として登場することもある。
■全体の現代語訳(まとめ)
もしも思慮深い人が、誰かの言動を日々観察したうえで、「この人は賢く、行動に非がなく、知恵と徳を兼ね備えている」と称賛するならば、
その人はまるでジャンブーナダ河から得られた黄金で作られた純金のように、輝きと価値を持つ存在である。
そのような人物を、誰が批判できようか。神々すら、そして宇宙の秩序を保つ梵天でさえも、その人を称賛するであろう。
■解釈と現代的意義
この偈は、「本当の評価は一時的な人気ではなく、時間と人格が生む」と教えています。
善き人はすぐに目立つわけではありませんが、観察されるうちに「深み」と「一貫性」が明らかになります。
また、そのような人物は時代や立場を超えて尊敬され、やがて普遍的な価値となって人々の記憶に残るのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
長期的信頼と評価 | 一時的な成果よりも、誠実さと継続した行動が本物の信頼を生み出す。時間が人格を証明する。 |
リーダーシップ | 本当のリーダーは、権威や発言力ではなく、その行動の一貫性と人柄で評価される。 |
社内文化の育成 | 「すぐに目立つ人」ではなく、「一貫して信頼できる人」が評価される文化を醸成することが、組織の成熟につながる。 |
自己修養の指針 | 日々の小さな行動の積み重ねこそが、将来の評価と信頼を築く。急がず、怠らず、正しく。 |
■心得まとめ
「真に優れた人物は、時とともに自然と称えられる」
短期的な評価にとらわれず、誠実・知恵・徳行を日々積み重ねる者こそ、永続的に輝く。
ビジネスにおいても、瞬間の成功よりも、「人格の純金」を鍛える道が、最終的な成功と尊敬に至るのです。
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