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■引用原文(日本語訳)
第一七章 怒り(二二八)
ただ誹られるだけの人、またただ褒められるだけの人は、
過去にもいなかったし、未来にもいないであろう、
現在にもいない。
■逐語訳
- ただ誹られるだけの人、
→ 常に否定的にしか見られない人も、 - またただ褒められるだけの人は、
→ 常に賞賛されるだけの人も、 - 過去にもいなかったし、
→ 過去の時代にも存在せず、 - 未来にもいないであろう、
→ 将来にも出現することはないだろう。 - 現在にもいない。
→ 今この瞬間にも、そうした人物はいない。
■用語解説
- 誹り(そしり):他者からの否定的な評価や中傷、批判の言葉。
- 褒め(称賛):他者からの賞賛や称え。仏教ではこれら両方に執着しないことが重要とされる。
- 三世(過去・現在・未来):時間を超えた普遍性を表現する仏教用語。ここではこの教えの「永遠性」を強調するために用いられる。
■全体の現代語訳(まとめ)
人は誰しも、全員から常に誹られることもなければ、常に褒められることもない。
それは過去にも例がなく、未来にも現れず、今現在にも存在しない。
完全に否定もされず、完全に賞賛されることもないのが、この世の摂理である。
■解釈と現代的意義
この偈は、「他者からの評価は常に両面性を持つ」という真理を説いています。
私たちは、誰からも認められたい、批判されたくないと思いがちですが、それは幻想です。
どれほど善行を尽くした聖者でさえ、批判も称賛も受けたのです。
重要なのは、外部の評価に一喜一憂せず、内なる道徳と誠実さに基づいて行動することです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
顧客評価への向き合い方 | すべての顧客から常に満点評価を得ることは不可能。批判も改善の糧として受け止めることが大切。 |
人事・評価制度 | 社内評価においても、全員に好かれる人はいない。大切なのは「公正」と「自己の原則」。 |
意思決定 | 周囲の賛否が分かれる選択においても、理念と目的に照らして正しいと信じる道を選ぶべき。 |
セルフイメージ管理 | 「褒められたい」「嫌われたくない」という欲を捨て、自己の軸で生きる姿勢がリーダーとしての成熟を促す。 |
■心得まとめ
「すべての人に好かれようとすることは、苦しみの種である」
どんなに正しく行動しても、すべての人に認められることはない。
だからこそ、自分の信念と倫理に基づいて行動することが、心の自由と成長をもたらす。
ビジネスでも人生でも、評価ではなく信念を羅針盤とせよ――それがこの偈の教えです。
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