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■引用原文(日本語訳)
第一七章 怒り(二二一)
怒りを捨てよ。慢心を除き去れ。いかなる束縛*をも超越せよ。名称と形態*とにこだわらず、無一物となった者は、苦悩に追われることがない。
*束縛:煩悩によるしがらみ。
*名称と形態:名(心の働き)と色(身体や物質)の執着。
■逐語訳
- 怒りを捨てよ。
→ 怒りという衝動を手放しなさい。 - 慢心を除き去れ。
→ 自分を偉いと思う心(傲慢さ)を取り除きなさい。 - いかなる束縛をも超越せよ。
→ 煩悩や執着のすべてを乗り越えなさい。 - 名称と形態にこだわらず、
→ 物の名前や姿形(表面的なもの)にとらわれることなく、 - 無一物となった者は、苦悩に追われることがない。
→ 何も所有しない者は、もはや悩みや苦しみに追いかけられない。
■用語解説
- 怒り(コーダ):破壊的な感情であり、他者も自分も傷つける煩悩のひとつ。
- 慢心(マーナ):自分を高く見積もること。誇り・高慢。仏教において六慢と呼ばれる心の毒。
- 束縛(サンヨージャナ):再生(輪廻)に繋がる心の結び目。欲・見解・執着など。
- 名称と形態(ナーマ・ルーパ):仏教で「心的要素と物質的要素」。世界を認識するときの構造だが、これに執着すると迷いが生じる。
- 無一物(無所有):一切の執着を手放した状態。悟りの境地。
■全体の現代語訳(まとめ)
怒りを手放し、自分への過信を捨てよ。
執着によって心を縛るあらゆるものから自由になりなさい。
物の名前や姿にとらわれず、「これが自分のものだ」という執着を手放したとき、人はもはや苦しみから追われることがない。
■解釈と現代的意義
この偈は、内面の解放こそが真の自由をもたらすと説いています。
怒りや慢心は、人間関係を損ない、結果的に自分自身をも苦しめます。
また、私たちは目に見える肩書き、財産、評価にとらわれがちですが、それらは本質ではありません。
それらを手放したとき、心は静かで自由な状態に至るのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
感情のマネジメント | 怒りは判断を曇らせ、チームに悪影響を与える。まず自分の感情を観察し、適切な反応を選ぶ力を養う。 |
リーダーの在り方 | 「自分が正しい」と思い込む慢心を手放し、謙虚さを持って学び続けるリーダーが、信頼を得る。 |
肩書きや役割にとらわれない | 役職や名誉に執着せず、本質的な価値提供に集中することで、真の影響力が高まる。 |
ストレス軽減と自由な発想 | 所有や評価への執着を減らすことで、柔軟な発想と平穏な精神状態が生まれる。 |
■心得まとめ
「怒りを手放し、こだわりを超えて、心の自由を得よ」
怒りや慢心、名声や見た目へのこだわりは、すべて苦悩の種です。
それらを手放し、真に自由な心で仕事と人生に向き合うとき、私たちは迷いなく、力強く歩むことができます。
ビジネスでも人生でも、こだわりを超えることが、次の成長への扉となるのです。
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