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この世のすべてを得るより、一歩でも悟りの道を歩め


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■引用原文(『ダンマパダ』第十三章 第178偈)

大地の唯一の支配者となるよりも、天に至るよりも、全世界の主権者となるよりも、聖者の第一階梯(預流果)のほうがすぐれている。
― 『ダンマパダ』第178偈(中村元訳)


■逐語訳(逐文的な意味の解釈)

  • 大地の唯一の支配者となるよりも:地上の王として全ての土地を治めるよりも、
  • 天に至るよりも:天界に生まれ変わるような善果を得るよりも、
  • 全世界の主権者となるよりも:全宇宙の権力を掌握することよりも、
  • 聖者の第一階梯(預流果)のほうがすぐれている:聖なる道に入る第一歩(悟りの最初の境地)こそ、はるかに価値がある。

■用語解説

  • 預流果(ソーターパッティ):仏教における四向四果の第一果。輪廻を脱する道に「流れ入り」、七生以内に必ず悟りに至る者とされる。
  • 天に至る(天界に生まれる):善行の果報として得られるが、まだ輪廻の中にとどまる存在。
  • 全世界の主権者:この世の最大の権力・名声・財力を手に入れた者の象徴。
  • すぐれている(シェーショー):価値・意義・功徳・究極性の面で、他よりも卓越している。

■全体の現代語訳(まとめ)

「たとえこの大地をすべて支配し、天に生まれ変わり、全世界の権力を手にしたとしても、
それらよりはるかに尊く価値があるのは、聖なる道への第一歩(預流果)を踏み出すことである。」
――この偈は、世俗的な成功や快楽ではなく、精神的な目覚めこそが真に人間を高めると説いています。


■解釈と現代的意義

この偈は、仏教の核心的価値観――「悟りこそ究極の目的である」――を簡潔かつ力強く宣言しています。
富・地位・権力・天上の快楽すらも、輪廻の範囲にとどまるものであり、それらは永遠ではありません。
しかし「預流果」、すなわち仏道に目覚め、自己の迷いに気づいた一歩は、永遠の解放への扉を開くものです。

現代では、世俗的な「成功」ばかりが強調されがちです。
けれども、この偈はそれに疑問を投げかけます――
本当の勝利とは、外にあるのではなく、「目覚めた心」にあるのではないかと。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
価値観の優先順位地位や報酬よりも、「自分は何のために働いているのか」という問いを持つ人は、深い満足とぶれない判断力を得る。
成功の再定義売上や評価ではなく、「精神的成熟」「人間性の成長」に軸足を置くことが、長期的にサステナブルなリーダーを生む。
学びと自己成長キャリアアップよりも「自分を知り、磨くこと」に価値を置いた人材は、組織に静かな力をもたらす。
内的モチベーション外的報酬ではなく、「自己実現」や「社会貢献」への意識が、真のやりがいと継続力を育てる。

■心得まとめ

「この世を制すより、己を目覚めさせよ」

この偈は、人生における「最高の勝利」は、外の世界の掌握ではなく、
内なる覚醒の一歩にあると教えてくれます。
王になるより、神になるより、「己の迷いに気づき、真理の道を歩み始めること」。
それが、すべての成功の中で、もっとも深く、永続的な幸福をもたらすのです。


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