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■引用原文(日本語訳)
『ダンマパダ』第十二章「自己」第166偈
「たとい他人にとっていかに大事であろうとも、(自分ではない)他人の目的のために自分のつとめをすて去ってはならぬ。
自分の目的を熟知して、自分のつとめに専念せよ。」
■逐語訳
- 他人の利益が大きくとも(paraṃ pi ce atthakāmaṃ)
- 自己の利益を捨ててはならない(na attano hitam pariccajeyya)
- 自己の目的を知り(attaññū)
- 自己の義務に専念せよ(attano kammaṃ niyojaye)
■用語解説
- 他人の目的・利益(paraṃ atthakāmaṃ):他人が達成しようとする目標や期待。善意を含んでも、自分にとって本質的ではないこと。
- 自己のつとめ・義務(attano kammaṃ):自分が果たすべき責務・人生の使命。道徳的・実践的役割。
- 自己の目的を知る(attaññū):「自分とは何か」「何のために生きるか」を深く理解すること。
- 捨て去ってはならぬ(na pariccajeyya):自分に課せられたことを、他人の都合で手放すべきではない、という強い戒め。
■全体の現代語訳(まとめ)
たとえ他人の目標がどれほど重要に見えようとも、そのために自分自身の本来の使命や義務を捨ててはならない。自分自身の目的をよく理解し、それに基づいて自分の役割をまっとうすべきである。
■解釈と現代的意義
この偈は、現代人が陥りがちな「他人軸の人生」に警鐘を鳴らしています。
他人の期待や価値観に振り回され、自分の使命や本分を見失ってしまうことは、真の生き方を損なう危険があるという仏教の教えです。
これは利己主義を肯定するものではなく、「自己の本当の役割と価値を果たすことが、結果として他者にも貢献する」という、深い倫理観に基づいています。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈・適用例 |
---|---|
キャリア設計 | 上司や家族の期待に応え続けた結果、自分の目標や情熱を失ってしまうことは本末転倒。本当に大切なことを見極める力が必要。 |
ミッションとブレない軸 | 組織や顧客に尽くすことは重要だが、自社や自分の理念に反することまで迎合すべきではない。 |
タスク管理と集中 | 周囲の要望に応じすぎると、自分の本来の優先事項を後回しにしがち。成果が出ない最大の理由は「他人の都合に流されること」。 |
リーダーの判断 | 他部門や社外のプレッシャーを受けても、自部門のビジョン・戦略を明確にもち、譲れない軸を守ることが信頼につながる。 |
■心得まとめ
「己の道を知り、他人の期待に呑まれるな」
どんなに善意であっても、他人の期待や目標に全て応えようとすれば、自分の道を見失う。
本当に果たすべき「己のつとめ」とは何かを明確にし、それにこそ集中することで、ぶれない人生と成果が築かれる。
“自己を知り、自己を活かす”――それが、真の貢献と幸福への道である。
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