目次
■引用原文(日本語訳)
第十章 暴力(ダンダヴァッガ)第142偈
身の装いはどうあろうとも、
行ない静かに、心おさまり、身をととのえて、
慎みぶかく、行ない正しく、
生きとし生けるものに対して暴力を用いない人こそ、
「バラモン」とも、「道の人」とも、また「托鉢遍歴僧」ともいうべきである。
(『ダンマパダ』第142偈)
■逐語訳
- 身の装いはどうあろうとも:見た目が立派であるか、粗末であるかは問題ではない。
- 行ない静かに、心おさまり:行動は穏やかで、内面も調和している。
- 身をととのえて、慎みぶかく:節度を保ち、礼儀正しく、内省的である。
- 生きとし生けるものに対して暴力を用いない人こそ:すべての命ある存在に対して慈悲をもって接し、害をなさない者こそが、
- バラモン/道の人/托鉢僧と呼ばれるべき:真に尊敬されるべき人格の持ち主である。
■用語解説
- バラモン(Brahmana):古代インドにおける最高位の祭司階級だが、仏教では「内面の清らかさを備えた人」を意味する倫理的称号。
- 道の人(サマナ):世俗を離れて道を求める者。修行者、真理探究者。
- 托鉢遍歴僧(ビクシュ):食を乞いながら修行を続ける僧侶。外見ではなく、心と行いによってその資格が問われる。
- 装い:布・髪型・所持品など、社会的地位や信仰を示す外見的装飾。
■全体の現代語訳(まとめ)
人がどのような服を着ていても、
その人の行動が穏やかで、心が静まり、節度と礼儀を持ち、
すべての命に対して暴力をふるわないならば、
その人こそ、本当の意味での「尊い人」「道の人」「修行者」と呼ぶべきである。
■解釈と現代的意義
この偈は、「真の尊敬は、外見や肩書ではなく内面と行動に宿る」という仏教の根本思想を端的に表現しています。
ブッダは、当時のインド社会で当然視されていた身分制度を超え、
実践と慈悲、節度と非暴力をもってこそ人は高められると明言します。
この教えは、現代にもそのまま通用します。学歴・肩書・見た目に惑わされるのではなく、
その人の態度、優しさ、誠実さによって人を見るべきだという倫理的判断の根拠を与えてくれます。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
リーダーシップの本質 | 外見や役職よりも、言動と信頼関係の築き方がリーダーの本質を決める。黙して語るリーダーほど信頼される。 |
職場の人間評価基準の見直し | 実績や派手なプレゼンより、誠実な仕事・協調性・非攻撃的態度が、組織の成長に貢献する。 |
面接・採用・育成の視点 | 見かけや経歴に惑わされず、「日々の行動にどれだけ慈悲と節度があるか」で人材の本質を見抜く。 |
■心得まとめ
「その人の尊さは、服ではなく、心と行いに現れる」
ブッダは、見た目や伝統的肩書に左右されず、
「穏やかに生き、暴力なく、節度を持って行動する人」こそが、真に尊敬されるべき存在であると説きます。
現代においても、形式を超えて本質を見る目、内面を磨く意識こそが、個人・組織の進化を支える力となるのです。
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