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■原文(日本語訳)
大空の中にいても、大海の中にいても、山の中の奥深いところに入っても、およそ世界のどこにいても、悪業から脱れることのできる場所は無い。
(『ダンマパダ』第九章「悪」第127偈)
■逐語訳(一文ずつ訳)
- 大空の中にいても、
→ たとえ空を飛ぶような場所に身を隠しても、 - 大海の中にいても、
→ 広大な海の奥深くに逃れても、 - 山の中の奥深いところに入っても、
→ 誰も来ないような山の奥に隠れても、 - およそ世界のどこにいても、悪業から脱れることのできる場所は無い。
→ 世界中のどこに逃げようとも、悪の行いから生じる報いは避けられない。
■用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
大空・大海・山奥 | 普通の人が近づかない・見つからない場所=「逃げ場」「隠れ場」の象徴。 |
悪業(あくごう) | 悪意による思考・言葉・行為。殺生・盗み・虚偽・貪り・怒りなど。 |
脱れる(まぬがれる) | 逃れる、免れる、報いを受けずに済むこと。 |
場所は無い | 空間的逃避では因果律からは逃れられないという絶対的な教え。 |
■全体の現代語訳(まとめ)
空の上でも、海の底でも、山の奥深くでも、
世界中のどこに逃げても、悪業の報いからは逃れられない。
これは、「場所や環境を変えても、行為の結果は消えない」という仏教の因果律の厳しさを表す偈である。
■解釈と現代的意義
この偈は、「行為の責任からは逃れられない」という仏教の基本姿勢を明確に示しています。
逃亡・転職・匿名・時間の経過――いかなる手段をもってしても、悪業の結果(=報い)は消せない。これは仏教における道徳的な因果応報の絶対性を意味します。
私たちが向き合うべきは、「どこに逃げるか」ではなく「どのように生き直すか」なのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
テーマ | 応用解説 |
---|---|
不正の追跡性 | 書類改ざん・情報漏洩・権力の乱用などの悪行は、どれだけ巧妙に隠しても、いつか明るみに出る。 |
“逃げ”の選択は解決にならない | 職場やポジションを変えても、心の在り方と行動を正さない限り、同じ問題が繰り返される。 |
企業の社会的責任(CSR) | 外部にバレなければ良い、では通用しない。倫理的行為の積み重ねがブランドを築く。 |
経営者・管理職の自省 | 決定権を持つ者ほど「自分の行為が未来にどう返ってくるか」という“因果の意識”が不可欠。 |
■心得まとめ
「悪の報いは、どこまでも追いかけてくる」
逃げ場所を探すより、
いま、どのように“心と行い”を正すかが重要である。
行為の責任は、空間や時間によって無効にはならない。
だからこそ、正しさは“今この瞬間”の選択に宿る。
ブッダの教えは、逃げるな、向き合え――そう告げている。
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