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■引用原文(ダンマパダ 第三章「心品」 第35偈)
「心は、捉え難く、軽々とざわめき、欲するがままにおもむく。その心をおさめることは善いことである。心をおさめたならば、安楽をもたらす。」
—『ダンマパダ』 第3章 第35偈(中村元訳ほか)
■逐語訳(一文ずつ)
- 心は捉え難く:心は形がなく、とらえようとしてもすぐ逃げていくような性質を持つ。
- 軽々とざわめき:心は非常に軽く、些細な刺激でもすぐに動揺し、落ち着きを失う。
- 欲するがままにおもむく:心は自らの欲望に従って自由に動いてしまう。
- その心をおさめることは善いことである:こうした心を統御し整えることは、精神的にも倫理的にも優れた行いである。
- 心をおさめたならば、安楽をもたらす:もし心を制することができれば、安らぎと幸福が訪れる。
■用語解説
用語 | 解説 |
---|---|
捉え難く(アドゥッティガンマ) | 心は実体を持たず、瞬間ごとに変化するため、固定化できない。 |
軽々とざわめく(チャンカマーナ) | 心は繊細で、外部刺激や内的感情にすぐ反応する性質を持つ。 |
欲するがままにおもむく(ヤターカーマン) | 欲望や執着に従い、容易に方向を変えること。 |
おさめる(ダンタ) | 調御・制御・訓練して心を整える行為。仏教修行の中心的実践。 |
安楽(スッカ) | 単なる快楽でなく、心の平穏・満ち足りた状態を意味する。 |
■全体の現代語訳(まとめ)
心は不安定で、常にざわつき、欲望に従って揺れ動く。その心を訓練し、制御することは極めて価値のあることであり、真の幸福をもたらす鍵である。心の安定なくして、安楽も成就しない。
■解釈と現代的意義
この詩句は、煩悩や欲望に翻弄されがちな心を自覚的に整えることの大切さを説いています。心の在り方が人生全体の質を決めるという仏教の核心的思想が表現されています。
現代では情報や刺激にあふれた環境の中で、心が常に揺れ動く状況が日常です。しかし、内なる静けさを得るためには、自己制御と心のトレーニングが不可欠です。この教えは、マインドフルネスや瞑想、感情知能(EQ)の育成など、現代心理学やリーダーシップの分野でも再評価されています。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
感情コントロール | プレッシャー下でも冷静な判断を下せる人材は、心の訓練を重ねた証である。 |
意思決定の安定性 | 外的要因に惑わされず、自分の判断軸を保つことで、長期的に正しい選択ができる。 |
集中力と成果 | 心が騒がしければ集中できず、成果にもつながらない。逆に整えられた心は高いパフォーマンスをもたらす。 |
リーダーの資質 | チームを導く者は、まず自分の心を導くことが求められる。感情の起伏ではなく、安定した心で信頼を勝ち得る。 |
■心得まとめ
「心を整える者だけが、真の安らぎを得られる」
世界を変えたいなら、まず自分の心を整えることから始めよ。心のざわめきに流されず、欲望に支配されず、しっかりと自己の内面を見つめ、静かに保つ。その訓練こそが、安楽への道をひらく――この偈は、人生と仕事に共通する「最も本質的な道」を示しています。
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