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報いを求めず、ただ尽くす。それが真の忠義


一、原文の引用と逐語訳

主君に忠節、朋輩に懇切など、不部にしてすれば、却って仇になることあり。
この心を信玄の壁書に、『忠節述懐・述懐謀叛・謀叛没落』と書き記され候。
御褒美これなき時、少しも恨み奉らず、いよいよ忠節を尽くすべし。
頼母しをして、礼謝なく、却って取違へ、遺恨など存ずる人ありとも、少しも不気味に存ぜず、いよいよ頼母しをして人の為になるべしと覚悟すべし。
主君へは蔭の奉公が真なり。仇を恩にて報じ、陰徳を心がけ、陽報を存ずまじきなりと。

現代語訳(要約)

主君への忠義や友人への親切であっても、それが見返りを求める心から発せられていれば、かえって関係を壊す危険がある。
たとえば、忠節を尽くしても褒美がなかったとき、「報われなかった」と不満を抱くと、それがやがて愚痴となり、ついには裏切りへとつながる恐れがある。
同じく、親切にしても感謝されなかったからといって憤るようでは、最初から親切にしないほうがましである。
真の忠節・親切とは、**「報いを求めない」「かげで尽くす」**ものでなければならない。


二、用語解説

用語解説
反対給付自らの行為に対して「見返り」や「報酬」を求めること。
壁書(かべがき)武田信玄が残した掟。ここでは「忠節が愚痴に、愚痴が謀叛に、謀叛が没落に」という教訓を示す。
陰徳(いんとく)人知れず善行を行うこと。対義語は「陽報」=目に見える褒美・名誉。
蔭の奉公誰にも知られず、目立たず、ひたすら主君や人のために尽くすこと。

三、全体の現代語訳(まとめ)

忠節や親切とは、見返りを求めてはならないものである。
努力したのに報われなかったからといって不満を抱けば、その心がねじれ、やがて忠義すら害となってしまう。
人に尽くすときは、「見返りはなくて当然、あればありがたい」くらいの気持ちでいること。
そして、主君や人のために尽くすことは、「人知れず」「影のように」行うのが真の姿である。
仇を恩で返し、陰徳を積む覚悟を持ち、陽報(目に見える報酬)は求めない――これが忠義・友情・人間関係の本質である。


四、解釈と現代的意義

この教えは、現代においても以下のような状況に通じます:

  • 「あれだけやってあげたのに」という見返り意識は、人間関係を壊す最大の要因。
  • ビジネスや組織内での貢献も、「評価されなかった」と不満を募らせると、チームワークが崩れる。
  • むしろ、見返りを求めない“無償の貢献”が、信頼と尊敬を勝ち取る。
  • 「陰徳を積む」ことは、長期的にみて最も大きな成果につながる。

五、ビジネスにおける解釈と適用

項目解釈・実践方法
人材評価見える成果だけでなく、「陰で支えている貢献」も正当に評価する文化をつくる。
組織文化成果主義一辺倒ではなく、「無償の支援」「チームのための行動」が称賛される風土を育む。
リーダーシップ部下の尽力に対しては、言葉や態度でしっかり感謝を示し、期待に応えないことの危険性を理解する。
同僚関係親切や助力は「返してもらうため」でなく、「相手が助かること」自体に価値があるという姿勢を持つ。
自己マネジメント「評価されるためにやる」のではなく、「自分の信念と誠意に従ってやる」意識を持つこと。

六、心得まとめ

● 忠義とは、報いを求めぬ奉仕にこそ真価が宿る。
● 見返りを期待した瞬間、行為の価値は損なわれる。
● 感謝されなくても、誤解されても、それでもなお尽くすこと――それが本当の「徳」。
● 陰徳は、やがて形を変えて自身に返ってくる。だが、それを望んではならない。


目次

🌟結論:与えるは、受け取るより強し

  • 真の忠義・親切は「誰にも知られず」「見返りを求めず」行うもの。
  • 陽報を求めれば失望が残る。陰徳を積めば、徳が身を守る。
  • 仇を恩で返す覚悟を持ったとき、人は真に強く、尊敬される存在になる。

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