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災難こそ転機、祝いの言葉で風を変えよ


一、原文の引用と現代語訳(逐語)

原文(抄)

不慮の事出来て動転する人に、笑止なる事などといへば、尚々気ふさがりて物の理も見えざるなり。
左様の時、何もなげに、かへつてよき仕合せなどといひて、気を奪ふ位あり。
それに取り付いて、格別の理も見ゆるものなり。
不定世界の内にて、愁ひも悦びも、心を留むべき様なきことなり。

現代語訳(逐語)

思いがけない災難にあって、取り乱している人に「お気の毒」などといえば、
かえってその人の気持ちはふさぎ、物事の道理も見えなくなってしまう。

そんなときは、何気なく「あれはむしろ良かった」と言って、相手の気持ちを一瞬奪う(=驚かせる)くらいでよい。
そのきっかけによって、かえって思いもよらぬ道理や解決の糸口が見えてくることがあるのだ。

この世は無常であり、喜びも悲しみも、心を固定してはならない。


二、用語解説

用語解説
不慮の事思いがけない災難や不幸。事故・失敗・喪失など。
笑止なる事気の毒だとか、不運だということ。
気を奪ふ驚かせ、我に返らせるような働きかけ。感情の急所を外す。
格別の理それまで見えなかった真理、活路、ポジティブな視点。
不定世界無常で予測できない世の中。

三、全体の現代語訳(まとめ)

人は災難に遭うと、その事実に囚われ、思考が閉じてしまう。
そんな時に「気の毒に」などと同調すれば、相手の心はますます沈む。
逆に、「むしろ良かった」「これで新しい道が開けたかも」といった予想外の言葉を投げかけることで、感情の流れを断ち切り、再起へのきっかけをつくることができる。
悲しみも喜びも、ずっと心に留めてはいけないのがこの不確かな人生なのだ。


四、解釈と現代的意義

これは「非常時の処世術」であり、「心の戦術」である

  • この教えは、災難そのものを軽んじているのではありません。
  • むしろ、人の心が傷ついたときこそ、その“切り返し”にこそ真の思いやりがあるという思想です。

現代での適用シーン

  • 不運な出来事が起きたとき、周囲が皆「かわいそう」と言う中で、
     「あえて祝う」「むしろこれでよかった」と言える人がいると、場が変わります。
  • それは決して無神経なのではなく、**再起のきっかけ=「視点を変える力」**なのです。

五、ビジネスにおける解釈と適用(個別解説)

項目解釈・適用例
クレーム・失敗への対応「この失敗で大事なことに気づけました」と、転機として前向きに語る姿勢が信頼を生む。
部下の失敗・不運時「この経験は財産になるよ」「むしろここからが本番だね」と言えば、次に進む勇気を与えられる。
経営の危機や方針転換ピンチをチャンスと捉え、語り直すことで士気を維持し、危機管理を実現する。
組織の変化や退職時「別れは始まり」「この変化がなければ気づけなかった」と祝いに変えることで、後味を変える。

六、補足:「悲しみに心を留めてはならぬ」という無常観

常朝のこの章句の奥底には、「心を流動させよ」という老荘的思想があります。
「悲しみも悦びも、ずっとそこにとどまってはいけない」
これはまさに、「感情にとらわれない自由な心」のすすめでもあります。


目次

七、まとめ:この章句が伝える心得

「災難に祝いを言う者は、再起の道を開く者である」
人は思いがけぬ不幸に遭ったとき、正論や同情よりも、意外性と余白ある言葉によって癒される。
だからこそ、「かわいそう」ではなく、「むしろ良かったじゃないか」と祝う覚悟を持て。
その言葉が、暗闇に光を差す**“心のスイッチ”**となる。


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