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■原文(日本語訳)|第11章 第50節
サンジャヤは語った。
「ヴァースデーヴァ(クリシュナ)は、アルジュナにこのように告げると、
再び自分の〔人間の〕姿を示した。
偉大な人は再び温和な姿になって、恐れたアルジュナを元気づけた。」
■逐語訳
- イティ・アルジュナム・ヴァースデーヴァハ・ウクティヴァー(このようにアルジュナに語った後):クリシュナはメッセージを伝えた後、
- スヴーカム・ルーパム・ダルシャヤーマーサ(再び自らの本来の姿を示した):超越した宇宙相を閉じ、親しみある姿へ戻った。
- アーシャヴァサヤット・ビータマン(恐れていた者を慰めた):怯えていたアルジュナを優しく元気づけた。
- ブーター・バーヴァナ(万物を育む者):創造し、育て、慈しむ偉大な存在としてのクリシュナ。
■用語解説
- ヴァースデーヴァ(Vāsudeva):クリシュナの尊称。神性を持ちながら人間の姿で現れる存在。
- スヴァカム・ルーパム(自分の本来の姿):親しみある人間の姿。師・友・導き手としての姿。
- アーシャヴァサヤ(安心・慰め):心を静め、再び勇気を与える働き。
- ビータマン(恐れた者):クリシュナの宇宙相に圧倒されていたアルジュナ。
- ブーター・バーヴァナ(万物を育む者):破壊する神ではなく、慈しみ育む神性の側面。
■全体の現代語訳(まとめ)
サンジャヤ(物語の語り手)は述べます。
クリシュナはアルジュナに圧倒的な真実を示した後、
再び親しみある姿に戻り、恐れた彼を優しく励ました。
これは、真の指導者のあるべき姿――
「力の顕示の後に、思いやりで相手を支える」行為を象徴しています。
■解釈と現代的意義
この節は、ギーター全体に流れる**“愛ある指導”**の精神をよく表しています。
力を持つ者が、
- 相手が怯えたときに「元に戻って」
- 「大丈夫だよ」と声をかけて支える――
その姿勢は、ビジネスでも教育でも、家庭でも通用する普遍的な人間力のあり方です。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈と応用例 |
---|---|
権威と安心のバランス | 部下に厳しく伝えたあとは、言いっぱなしでなく、フォローし安心させることが信頼を築く。 |
変革のリーダーシップ | 大きなビジョンや計画を提示した後は、混乱した仲間に「寄り添う姿勢」で安心を与える。 |
心のケアと行動の一致 | 強さと優しさの両立は、リーダーが一貫した人格を持っていることの証。言動の一致が重要。 |
育成者としての成熟 | 恐れや不安に直面した人を、力ではなく「人間的信頼」で支えるのが、真の育てる力。 |
■心得まとめ
「力の後に、慈しみを――それが真の導きである」
驚かせることは簡単だ。
だが、驚かせたあとに安心させることができるか。
ギーターは語る:
「真の強さは、相手を怖がらせない優しさの中にある」
導く者は、ただ語る者ではない。
相手の心に灯をともす者である。
この第50節の後、アルジュナは心を静められ、クリシュナの導きに再び従い始めます。
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