目次
■原文(日本語訳)
第2章 第53節
クリシュナは言った。
「聞くことに惑わされたあなたの知性が、揺ぎなく確立し、
三昧において不動になる時、あなたはヨーガに達するであろう。」
■逐語訳
- シュロタヴィヤーシヤ(聞くべきこと):知識・経典・教義など外部の情報。
- チャ・シュルタスヤ(聞いたこと):過去に得た知識・記憶・思い込み。
- ヤダー・テ・ナ・ヴィカルマティ・ブッディヒ(あなたの知性がもはや揺れ動かなくなるとき):
外部の情報に惑わされることなく、内なる確信に根ざした状態。 - タダー・ヨーガム・アーヴァプスィ(そのとき、あなたはヨーガに達する):
その境地に達したとき、真のヨーガ(統一された心)を得る。
■用語解説
- 聞くことに惑わされる:多くの知識・情報・主張に翻弄され、判断力を失うこと。
- 知性(ブッディ):心(マナス)とは異なり、深い洞察・判断を司る内なる力。
- 三昧(サマーディ):心が一点に集中し、内的な静寂と統一が達成された境地。精神の最高安定状態。
- ヨーガ:心の働きを静め、内なる本質と一致する状態。実践と智慧の統合。
■全体の現代語訳(まとめ)
クリシュナはここで、知識や情報に振り回されることなく、揺るがぬ知性を確立することの大切さを説きます。
その知性が静まり、内なる平安に確立されたとき、三昧(深い集中)に至り、真のヨーガが始まるのです。
■解釈と現代的意義
この節は、ギーターが説く「実践的知性(ブッディ・ヨーガ)」の核心に迫ります。
情報や理屈に惑わされるのではなく、
深い静寂と集中の中で自己とつながる智慧こそが、
真のヨーガへの入り口であると説かれています。
つまり、
- 他人の声や常識ではなく、
- 自分の魂の声とつながることが、
- 本当の意味での「統一(ヨーガ)」なのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈と応用例 |
---|---|
判断力の確立 | 上司・ネット・トレンドなど外的情報ではなく、自らの原理・価値観を基に判断する力が必要。 |
集中力と意思決定 | 静けさの中でしか湧き上がらない直観力を重視し、雑音を遮断する環境をつくることが鍵。 |
本質への帰還 | 手法・ノウハウではなく「なぜやるのか」に戻ると、行動がブレなくなる。 |
内なるリーダーシップ | 外に答えを探すのではなく、自分の内に拠って立つ姿勢が、信頼を生み出す。 |
■心得まとめ
「静まる知性は、真の行動力を生む」
多くを聞き、学び、蓄えることも重要だ。
だが最終的に――
揺るがぬ知性こそが、智慧を生み、
智慧こそが、真のヨーガに導く。
ギーターは語る:
「静けさの中で確立された知性だけが、
真に揺るぎない行動を可能にする」
次の第54節からは、有名な「知性が確立した人(スティタ・プラグニャ)」の特徴が語られます。
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