目次
■原文(日本語訳)
第2章 第49節
クリシュナは言った。
「実に、〔一般の〕行為は、知性のヨーガよりも遥かに劣る。
知性に拠り所を求めよ。結果を動機とする者は哀れである。」
■逐語訳
- ドゥーレナ・ヒ・アヴァラム・カルマ(行為は劣っている):結果への執着を伴った通常の行為は、
- ブッディ・ヨーガート(知性のヨーガに比べて):智慧に基づいた行為(ブッディ・ヨーガ=知性の統御)よりも遥かに劣る。
- ブッディウ・シャラナン・アンヴィッチャ(知性に拠り所を求めよ):心のよりどころを智慧に求めよ。
- クリパナーファラ・ヘートヴァーハ(結果を求める者は哀れである):報酬を目的とする者は哀れな存在である。
■用語解説
- カルマ(行為):ここでは「結果を求める利己的な行動」の意。
- ブッディ・ヨーガ(知性のヨーガ):結果への執着を離れ、内なる知性に従って行う無私の行為。
- クリパナ(哀れな者):目先の利益ばかりを追い、真理に届かない小人物。
- ファラ・ヘートゥ(結果を動機とする):成果や報酬によって行動を決定する動機づけ。
■全体の現代語訳(まとめ)
クリシュナは、結果に執着して行う利己的な行動は、知性に基づいた無私の行動よりも遥かに劣ると断言します。
そして、行為の背後にある“動機”が最も重要であり、
純粋に「やるべきことを為す」智慧に従うべきであると語るのです。
■解釈と現代的意義
この節は、**「何をするか」ではなく、「どのような心で行うか」**に焦点を当てています。
現代の社会では、「成果主義」や「結果重視」が主流ですが、
それが行きすぎると、手段の選ばれない行為や心を失った働き方に陥ります。
ギーターは、そうした“短絡的な成功”を戒め、
知性=内なる原理に従った行動のほうが、遥かに高貴であると教えているのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈と応用例 |
---|---|
成果至上主義の罠 | 結果だけを追えば、短期的利益のために道徳や品質が犠牲になることがある。 |
知性に基づく意思決定 | 内なる原則・哲学・価値観に基づいて判断することが、持続可能な組織やキャリアを作る。 |
プロフェッショナルの姿勢 | 結果よりプロセスと動機を大切にする人が、長期的な信頼と評価を築く。 |
動機の再点検 | 「なぜこれをやっているのか?」と定期的に自問し、原点を見失わない姿勢が求められる。 |
■心得まとめ
「行為の価値は、心の純粋さに宿る」
利得や称賛を動機にした行動は、表面的には立派に見えても、
魂の成長にはつながらない。
ギーターは言う:
「結果に惑わされず、智慧をもって進め」
それこそが、真に高貴な行為――
無私の行動、平静の中に生まれる真実の力である。
次の第50節では、知性をもって行為する者が「行為の術において熟達する」ことが語られます。
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