目次
■原文(日本語訳)
第2章 第43節
クリシュナは言った。
「欲望を性とし、生天に専念する彼らは、
行為の結果として再生をもたらし、
享楽と権力をめざす多種多様な儀式についての、華々しい言葉を語る。」
■逐語訳
- カーマートマーナハ(欲望を本性とする者たち):欲望が心の中心にある人々。
- スヴァルガ・パラー(天界を目的とする):天界=死後の快楽・楽園を目指して行動する者たち。
- ジャナマ・カルマ・パラ・プラダーム(生と行為の果報を生じさせる):再生輪廻を生むカルマの結果に執着。
- クリヤー・ヴィシェーシャ・バフラーム(儀礼に関する華々しい細部):儀式の複雑な詳細を大げさに語る。
- ブーガイシュヴァリヤ・ガティン・プラティ(享楽と権威に向かう):快楽と支配に強い欲望を抱く。
■用語解説
- カーマ(欲望):五感の快楽、富、地位への欲。精神を乱す根源的動因。
- スヴァルガ(天界):インド神話における死後の楽園。だがギーターでは一時的な存在に過ぎないとされる。
- クリヤー(行為・儀式):特にヴェーダに定められた祭式・供儀。
- ブーガ(享楽):五感を満たす快楽。
- アイシュヴァルヤ(権力・富):支配や威厳、外的成功の象徴。
■全体の現代語訳(まとめ)
クリシュナはここで、欲望と天界(死後の報酬)を追い求める者たちは、
複雑で華美な儀式を行い、それを高らかに語るが、
それらは快楽と権力の追求に過ぎず、真理や解脱にはつながらないと断じます。
■解釈と現代的意義
この節は、「宗教的な形式」や「外面的な善行」が、
本質から逸れることもあるという強い警告です。
それは現代でいえば――
「良いことをしているように見えるが、その動機が欲望や承認欲求にある場合」などに該当します。
ギーターは、**「真に解放へ向かう道は、内面の浄化と執着からの解放」であると繰り返し説いています。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈と応用例 |
---|---|
動機の透明性 | 表面的に「良さそうな活動」も、動機が自己利益や名声への執着であれば、真の信頼は得られない。 |
施策と目的の乖離 | 多機能・多制度・華美な企画でも、本質的価値に結びつかないと、企業文化やビジョンから外れてしまう。 |
快楽・権力欲の抑制 | 出世・高報酬・権限ばかりを追うと、信頼や尊敬を失うことも。目先の欲望よりも長期的信義が大切。 |
シンプルさの強み | 複雑で華やかな方法よりも、原理原則に基づくシンプルな実践のほうが信頼されやすく、継続性も高い。 |
■心得まとめ
「欲と栄華に彩られた道は、真の道ではない」
華やかな儀式や言葉、快楽や権力――
それらは魂の解放ではなく、再び輪廻という鎖を生む。
ギーターは問いかける:
「その行為は、心の静けさに近づいているか?」
動機を見つめよ。本質を問え。
真の道は、静かでありながら力強い。
次の第44節では、これらの執着が、いかに集中力や智慧(ブッディ)を損ない、
真のヨーガ(実践)から心を遠ざけるかが明らかにされます。
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