MENU

快も不快も過ぎ去る――動じずに耐える心を養え


目次

■原文(日本語訳)

第2章 第14節
クリシュナは言った。
「しかしクンティーの子よ、物質との接触は、寒暑、苦楽をもたらし、来たりては去り、無常である。それに耐えよ、アルジュナ。」


■逐語訳

  • クンティーの子(カウンテーヤ):アルジュナの呼称。クリシュナが親しみと敬意を込めて呼びかけている。
  • 物質との接触(マートラ・スパルシャーハ):感覚器官と対象との接触。五感を通して感じる刺激や印象。
  • 寒暑、苦楽(シート・ウシュナ・スカ・ドゥッカ・ダーハ):冷たい/熱い、楽しい/苦しいなどの感覚的な反応。
  • 来たりては去る(アーガマーパーヒノ・アナニティヤーハ):これらの感覚は一時的に現れては消えていく。
  • それに耐えよ(ティティクシャスヴァ):その変化に心を動かさず、静かに耐え忍べ。

■用語解説

  • マートラ・スパルシャ:五感(感覚器官)と五境(対象)の接触により生じる知覚。
  • シート・ウシュナ(寒暑):物理的な刺激の象徴。
  • スカ・ドゥッカ(快苦):心における満足と不満、快感と苦痛。
  • アナニティヤ(無常):永続しない、一時的なもの。
  • ティティクシャスヴァ(耐えよ):我慢せよ、という命令形。精神的な強さを求める言葉。

■全体の現代語訳(まとめ)

クリシュナは語る。「アルジュナよ、あらゆる感覚的な経験――暑さ寒さ、喜び悲しみ――は、外界との接触によって一時的に生じるだけであり、やがて過ぎ去っていくものである。だからこそ、それらに心を乱されることなく、耐えて乗り越えるのだ」と。


■解釈と現代的意義

この節は、「感覚による揺れ」を超える智慧と精神力の重要性を説いています。
私たちは日々、快楽には執着し、苦痛は拒絶しようとします。しかし、どちらも一時的な現象であり、それにとらわれる限り、心の平安は得られません。

クリシュナは「変化は自然の法則であり、コントロール不能だが、耐える力は自分で育てられる」と教えています。これは現代社会においてストレスや刺激が多い中でも、動じない軸を保つための精神的な技術といえるでしょう。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点解釈と応用例
感情の安定性成果や評価、他人の言動によって一喜一憂するのではなく、変化を前提とした安定した心で向き合う。
困難への対処力苦境や批判、失敗も「一時的なもの」と捉えることで、冷静に乗り越える力が養われる。
成功の捉え方快楽(成功、称賛)に依存せず、持続的な価値を追求する姿勢がプロフェッショナルとしての信頼を生む。
組織変化への適応社内の方針転換や環境変化を「当然起こるもの」として受け入れ、柔軟かつ冷静に行動する態度が求められる。

■心得まとめ

「変化は来ては去る。揺れずに、ただ耐えよ」
暑さ寒さのように、人生には快も不快も絶え間なくやってくる。
それに翻弄されるのではなく、「やがて過ぎる」と知って、静かに受け止め、耐える力を養うこと。
それこそが、動じない強さと深い安定をもたらす鍵である。


この節は、次の第15節「不動心を持つ者こそ解脱に至る」という内容へとつながっていきます。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次