目次
■原文(日本語訳)
第2章 第11節
聖バガヴァットは告げた。
「あなたは、嘆くべきでない人々について嘆いている。しかも、理屈めいたことを語る。しかし賢者は、死者についても生者についても嘆かない。」
■逐語訳
- 聖バガヴァットは告げた(シュリ・バガヴァーン・ウヴァーチャ):クリシュナが尊厳と慈愛をもって語り出す。
- 嘆くべきでない人々について嘆いている(アショーチャン・アナショーチャス・トワム):本来、嘆きの対象ではない存在(魂の観点)に執着している。
- 分別くさく語る(プラグニャーヴァーダーン・チャ・バーハセ):分かったような理屈(道徳・感情)を語っているが、それは真の智慧ではない。
- 賢者は嘆かぬ(ナ・アヌショーチャンティ・パンディターハ):真の智者は、命の本質を知っているので、生と死に動じない。
■用語解説
- アショーチャン:本来、悲しむべきではないもの(=変化しない魂、永遠なる自己)。
- プラグニャーヴァーダ:知恵あるような言葉、理性的・哲学的な主張。
- パンディタ(賢者):真理を理解し、魂の不滅を体得している人。知識ではなく「悟り」を持つ者。
- 嘆く(アヌショーチャンティ):執着や無知から生じる心の動揺。
■全体の現代語訳(まとめ)
クリシュナは、アルジュナの感情的な嘆きや理屈を一刀両断する。
「あなたが嘆いているのは、本来嘆くべき存在ではない。命の本質を理解していないからこそ、表面的な死や別れに心を乱している。真の賢者は、生きている者にも、死んでいる者にも執着せず、動揺しない」と語る。
■解釈と現代的意義
この節は、「命に対する智慧」の根本を示します。
クリシュナは、アルジュナが立派な理屈(倫理・感情)を語っていたとしても、それが真の智慧に基づかない限り、動揺や苦しみから自由になれないことを指摘しています。
死や別れ、損失に直面したとき、私たちも同じように「もっともらしい理屈」で自分を納得させようとしますが、それは一時的な慰めにすぎず、根本的な理解と解放には至らないのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 解釈と応用例 |
---|---|
感情的判断の排除 | 損失・失敗・離職などの現象に心を乱し、必要以上に悲観するのではなく、冷静かつ原則的に向き合う。 |
リーダーの心の安定 | 変化(生死・成功失敗)に動揺せず、根本の価値や使命に立脚する態度が信頼を生む。 |
他者の判断に左右されない | 他人の状況や感情的な言動に流されるのではなく、自分自身の理解と判断軸を持つことが大切。 |
本質を見抜く力 | 表面的な問題にとらわれず、「何を守るべきか」「変わらないものは何か」を見極めることが、持続的成長の鍵。 |
■心得まとめ
「真の賢者は、目に見える変化に心を揺らさない」
人は、死や損失、別れに直面すると、深い悲しみに囚われます。
しかし、クリシュナはそれを「嘆くべきでないものへの無明の執着」として指摘します。
真の知恵とは、「生死を超えた命の真理」に気づき、それを心の基盤とすること。
ビジネスでも人生でも、変化や喪失の中でこそ、その視点が試されます。
この第11節をもって、「アートマン(真の自己)」に関するクリシュナの教えが本格的に始まります。
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