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心の苦しみは、外の栄光では癒せない


目次

■原文(日本語訳)

第2章 第8節
アルジュナは言った。
「というのは、感官を涸らす私の悲しみを取り除けるものを知らないからだ。地上において並びない、繁栄する王国を得ても、神々の主権を得たとしても。」


■逐語訳

  • というのは(ナ・ヒ・プラパシャーミ):なぜなら、私は見いだせないからだ。
  • 感官を涸らす悲しみ(カールパニャム・スウカム):感覚すらも失わせるほどの深い絶望・悲嘆。
  • 取り除けるものを知らない(ヤッチョークム・ウッチョーシャナム・インドリヤーナーム):それを根本的に取り去るものを、自分は知らない。
  • 地上における並びない王国(アヴィチャーヴァリヤム・ラージャヤム):この世において他に並ぶもののない繁栄した国家の支配権。
  • 神々の主権(スラーナーム・アピ・チャー・アードヒパティヤム):天界をも支配するような絶大な権力。神々の王としての地位。

■用語解説

  • 感官(インドリヤ):五感。外界から喜びを受け取る器官=生の活力の象徴。
  • 涸らす(ウッチョーシャナ):干上がらせる。正常に機能しなくなるほどの精神的消耗。
  • 王国・主権:世俗的成功、権力、地位、あらゆる物質的恩恵の象徴。
  • 悲しみ(ショーカ):自己喪失・人生の意味の見失いによる本質的な苦しみ。

■全体の現代語訳(まとめ)

アルジュナは語る。「私の心を枯れさせるこの深い悲しみを、癒すものが他にあるとは思えない。たとえこの地上でどんな繁栄を手に入れようとも、神のごとき力を手に入れようとも、それでは私は救われない」と。
つまり、物質的成功では心の本当の痛みは癒せないという真理がここにある。


■解釈と現代的意義

この節は、現代人が陥りがちな「外的成功による内面の解決」幻想を鋭く打ち破るものです。
多くの人は、昇進・金銭・権威・名声を求めて努力しますが、深い悲しみや喪失、アイデンティティの危機はそれでは解決されません。
アルジュナはまさにそのことに気づいており、「本当の解決とは、内からの変化、智慧による理解しかない」と心から導きを求めています。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点解釈と応用例
内的充実と外的成果昇進・高給・成功があっても、心の空虚を満たすとは限らない。目的意識や意味が不可欠である。
バーンアウト(燃え尽き)目標達成後に虚無感を抱えるケースは、真の動機づけや内的成長が欠けている証。
メンタルヘルス対応表面的な報酬や評価ではなく、対話や価値観の再確認によって苦しみの根源にアプローチする必要がある。
価値の再定義自分にとって本当に価値あることとは何かを問い直すことが、持続可能な働き方・生き方に繋がる。

■心得まとめ

「どれだけの富や権力を得ても、心が乾いていては意味がない」
真の癒し、真の道とは、外側の報酬や結果ではなく、自分の内なる認識と姿勢の転換によってもたらされる。迷いと苦しみの中にあるとき、まず必要なのは「成功」ではなく、「智慧」と「導き」を求める勇気である。


この節をもって、アルジュナの内的告白と懇願のパートが一区切りとなり、次節(第9節)以降、クリシュナの本格的な教え(ギーターの核心)が始まります。

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