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■引用原文(日本語訳)
「あなたが我執により、『私は戦わない』と考えても、あなたのその決意は空しい。〔武人の〕本性があなたを駆り立てるであろう。」
(バガヴァッド・ギーター 第18章 第59節)
■逐語訳
- たとえあなたが、我執(エゴ)によって、
- 「私は戦わない」と決意しても、
- その意志はむなしい(空しい)ものとなる。
- あなたの**生まれ持った本性(プラクリティ)**が、
- あなたを行為へと駆り立てるであろう。
■用語解説
- 我執(アハンカーラ):自己への固執、自分の判断が絶対だという思い。
- 戦わない(ナ・ヨーツェー):ここでは義務や使命を放棄する象徴。
- 空しい(ムグハム):実現されず、無意味に終わること。
- 本性(スヴァバーヴァ/プラクリティ):個人の性質や傾向。魂が帯びた自然の働き。
■全体の現代語訳(まとめ)
クリシュナは、アルジュナの迷いを見抜いた上で、はっきりと語る:
「おまえが“戦わない”と決めても、それはエゴから出た空しい決意にすぎない。
おまえの魂に宿る本性──戦士としての宿命──は、おまえを行動へと駆り立てるのだ。」
■解釈と現代的意義
この節は、「自分の本分・天職から逃れることはできない」という真理を示しています。
人は時に、「やりたくない」「避けたい」「向いていない」と思っても、
その人自身の本性が、それをやらざるを得ない場に導くのです。
それを無理に抑え込もうとすれば、内的な葛藤や自己否定、現実逃避が起きます。
ギーターは語ります――
「意地や迷いで本分を拒むな。魂の声を聞け。」
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 実務での適用例 |
---|---|
キャリア選択 | 「辞めたい」「向いていない」と思っても、深層ではそれが自分の使命である場合、その道に戻されるような状況が繰り返される。 |
リーダーシップ | 自らの本性が導く責任や役割から逃れようとすると、逆にチームや環境がその人を必要とする場に呼び戻す。 |
プロジェクト遂行 | 苦しい時にやめるのはエゴによる判断かもしれない。むしろ「これをやるべきだ」という心の奥の声があれば、それに従うべき。 |
精神的成熟 | 外的状況よりも「自分は本質的に何者で、何をすべきなのか」という内面の理解が、安定した行動を生む。 |
■心得まとめ
「エゴの拒絶より、魂の衝動に従え」
ギーターは語る――
「役割から逃げても、心の奥の声が、
お前をその場へと戻すであろう。
それは運命ではなく、
お前の本性が語る使命なのだ。」
次節(第60節)では、「自然の力により、行為へと駆り立てられる仕組み」がさらに深く説明されます。
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