目次
■引用原文(日本語訳)
「信愛により彼は真に私を知る。私がいかに広大であるか、私が何者であるかを。かくて真に私を知って、その直後に彼は私に入る。」
(バガヴァッド・ギーター 第18章 第55節)
■逐語訳
- 信愛(バクティ)によって、彼(修行者・求道者)は、
- 真実に私(至高神/クリシュナ/ブラフマン)を知る。
- 私の広大さ、
- 真の本質が何であるかを知る。
- そして真に私を理解したその直後に、
- 彼は私と一つになる(私に入る)。
■用語解説
- 信愛(バクティ):無条件で純粋な愛。計算や見返りを超えた、魂からの献身。
- 真に知る(タットヴァタハ):「事実として」ではなく、「本質的に」「魂で」理解すること。体験的な叡知。
- 私に入る(マーム・プラヴィシャティ):神との合一、ブラフマンとの一体化、解脱(モークシャ)を意味する。
■全体の現代語訳(まとめ)
神(クリシュナ)は言う:
「計算ではなく、心からの信愛によってのみ、私は真に知られうる。
私の無限性と本質を悟った者は、その瞬間に、私と一体となる。」
■解釈と現代的意義
この節は、ギーター全体の核心に位置する教えの一つです。
知識・行為・瞑想といったあらゆる修行の果てに残るのは、
無条件の愛と一体化である、と説いています。
真理は、頭で考えるものではなく、愛をもって生き、理解するもの。
そこに至って初めて、神(あるいは宇宙)との本当の一体感=解脱が生まれます。
これは宗教的意味を超え、
人間としての到達点――**「自他を超えたつながり」**とも言える境地です。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 実務での適用例 |
---|---|
信頼関係の本質 | 利益や損得でなく、誠実な信頼・貢献の念を持って相手と接することが、本当の関係性を築く。 |
リーダーシップの深化 | 管理や論理だけでなく、愛情と関心による共感的理解が、真のリーダーをつくる。 |
組織文化 | 数字や評価に頼るのではなく、心からの理念・信条への共感によってこそ、組織は一体となる。 |
ブランド・顧客関係 | 顧客への「信愛」に近い気持ちで接する企業は、最終的に選ばれ、信頼される。 |
■心得まとめ
「真理は、頭でなく、愛で知る」
ギーターは語る――
計算や理屈を超えたとき、
心からの愛において、
人は宇宙とつながり、
永遠の真理とひとつになる。
この第55節は、**「愛と理解の一致こそが、最高の到達」**であるというギーターの精髄を語ります。
次の第56節では、この信愛に到達した者が「行為の中にあっても束縛されない」状態にあることが説かれます。
コメント