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■引用原文(日本語訳)
「成就に達した者が、どのようにしてブラフマンに達するか、私はそれをごく簡潔に説くから聞け。アルジュナ。これが知識の最高の帰結である。」
(バガヴァッド・ギーター 第18章 第50節)
■逐語訳
- 成就に達した者(シッディム・プラープタハ)――行為と心の成熟を果たした人が、
- いかにしてブラフマン(究極実在)に到達するかを、私は今、簡潔に語ろう。
- これこそが、すべての知識(ジュニャーナ)の最高の帰結(果報)である。
■用語解説
- 成就(シッディ):精神的・実践的に成熟し、行為において自己を確立した状態。
- ブラフマン(Brahman):宇宙の根源、真理そのもの。すべてを貫く絶対的実在。
- 知識の最高の帰結:真の知識(悟り)は、単なる知識の蓄積ではなく、自己と宇宙との一致(合一)に至ること。
■全体の現代語訳(まとめ)
アルジュナよ、私は今、真に完成された魂が、
いかにして宇宙の根本的な真理(ブラフマン)と一致するかを語ろう。
それは、あらゆる修行・知識の終着点であり、
悟りの本質に通じる最終的な境地である。
■解釈と現代的意義
この節は、いわば**ギーター全体の最終章における「総まとめへの序章」**です。
ギーターの教えは、道徳、行動、知識、信仰など多くの側面を持ちますが、
その最終的なゴールは「自己(アートマン)と宇宙的実在(ブラフマン)との合一」にあります。
それは単なる知識や宗教観念の集積ではなく、
行動・心・智慧がすべて一つに結ばれたときに初めて到達できる地点なのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 実務での適用例 |
---|---|
学びの目的 | 知識の取得が最終目的ではない。得た知識を自己の行動や価値観と一致させて初めて「智慧」となる。 |
リーダーシップ | 優れたリーダーとは、理念・知識・実行が調和している人。理念だけでなく、行為を通じて真理に近づく。 |
成長の段階論 | 知識 → 実践 → 内的統合 → 超越へと進む。現場経験や内省を通じて「知」は深まっていく。 |
ミッション意識 | 組織のビジョンやミッションも、理念として語るだけでなく、個々人が行動の中で一体化してこそ意味を持つ。 |
■心得まとめ
「学びの終着点は、世界と自分が一つになる境地にある。」
ギーターは言う――
真に知った者は、行動し、克服し、超えていく。
その先にあるのは、言葉を超えた一致――
自己と宇宙が一つであるという、最高の真理。
この節は、続く第51~53節で展開される「ブラフマンに至るための内的条件」の導入となります。
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