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■引用原文(日本語訳)
「地上においても天の神々においても、プラクリティ(根本原質)より生じた三要素から解放された生類はいない。」
(バガヴァッド・ギーター 第18章 第40節)
■逐語訳
この地上に生きる存在も、
天界の神々にさえも、
**プラクリティ(根本原質)**から生じた
三つのグナ(性質)――
- 純質(サットヴァ)
- 激質(ラジャス)
- 暗質(タマス)
――これらから完全に自由な存在は一つとしていない。
■用語解説
- プラクリティ(Prakṛti):宇宙の根本的な物質的原理。自然・現象世界の根源。すべての存在の基盤。
- 三要素(トリグナ):サットヴァ(純質)・ラジャス(激質)・タマス(暗質)の三属性。あらゆる存在・心の傾向に影響を与える基本原理。
- 生類(ブータ):生きとし生けるもの全体。人間・動物・神々を含む。
- 解放されていない(ナ・アスティ・ムクタ):完全にこの三性を超越し得ていない状態。
■全体の現代語訳(まとめ)
この地上の生き物であれ、天界の神々であれ、
すべての存在は自然の三つの性質(グナ)に従って生きている。
完全にこれらの性質を超えて自由でいる存在は、どこにもいない。
つまり、我々すべては「傾向と性質」に縛られている存在であるという現実が語られている。
■解釈と現代的意義
この節は、人間を含むすべての存在が「性質(グナ)」によって影響されているという普遍的な原理を明示しています。
私たちは「自分の意思で動いている」と思いがちですが、
実はその思考や行動は、
- 先天的な気質
- 習慣や環境
- 教育や経験
などから形成された「内的傾向(グナ)」によって強く左右されています。
ギーターはこの事実を認めた上で、
自らのグナを観察し、それを浄化・超越していくことが霊的成長であると教えています。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 実務での適用例 |
---|---|
自己理解と性質の自覚 | リーダーや個人が、自分の「反応の傾向」や「意思決定スタイル」に気づくことが重要。 |
チームマネジメント | チーム内でも、メンバーの性質(情熱型・慎重型・保守型など)を理解し、適材適所を意識する。 |
無意識的習慣の見直し | 「自分はこういう人間だから」と思考停止せず、習慣や性格傾向を意図的に見直す訓練が成長を促す。 |
組織文化への洞察 | 組織全体にもサットヴァ(理念・誠実)・ラジャス(競争・成果)・タマス(保守・怠慢)の傾向が見える。 |
■心得まとめ
「すべての行動は性質のあらわれである」
完全な自由は幻想であり、
私たちは常に「何らかの傾向」によって動かされている。
しかし、だからこそ――
その傾向を識別し、選び直すことで、より高き生き方を目指せるのだ。
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