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■引用原文(日本語訳)
「その知性が闇に覆われて、不徳を美徳と考え、またすべてのものごとを顚倒して考える時、それは暗質的な知性である。」
(バガヴァッド・ギーター 第18章 第32節)
■逐語訳
知性が
・闇(タマス)に覆われ、
・不徳(アダルマ)を美徳(ダルマ)と見なし、
・真理を逆転し、誤りを正義と信じるようになったとき、
そのような知性は、
暗質(タマス)に属する知性と呼ばれる。
■用語解説
- 暗質(タマス):無知・怠惰・混沌・錯誤の性質。識別力を鈍らせ、物事を正しく見られなくする。
- 知性(ブッディ):判断・区別・真理を見抜く力。
- 不徳(アダルマ)を美徳(ダルマ)とする:価値の転倒。間違ったことを正しいと思い込む。
- 顚倒(てんとう)して考える:善悪・真偽・義務と欲望など、あらゆる判断を反転してしまう認識の混乱。
■全体の現代語訳(まとめ)
知性が無明に覆われ、
本来の価値判断が完全に反転してしまい、
不正を正義と見なし、間違いを善と信じ、
すべての真理が歪んで映るような状態――
それはタマス(暗質)に支配された知性であり、
魂を誤った方向へ導く、最も危険な認識の形である。
■解釈と現代的意義
この節は、「無知が判断を破壊する」という恐ろしさを端的に語っています。
欲望や怒りといった感情ではなく、そもそも正しいことと間違ったことを識別する力自体が壊れている状態――
それがタマス的な知性です。
現代でも、価値観の混乱・誤情報・偏見・洗脳などにより、
人は「悪を善」「誤りを真理」として信じてしまうことがあるのです。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 実務での例 |
---|---|
倫理観の崩壊 | 不正会計・内部隠蔽・詐欺的取引などを「正当な手段」と誤認して実行してしまう。 |
正義の誤用 | 組織のためと言いながら、個人攻撃や排除を正義とする内部政治。 |
判断の麻痺 | 長時間労働や過剰なノルマを「当然」と受け入れてしまう思考停止状態。 |
組織文化の歪み | 悪しき慣習を「伝統」や「常識」として疑わず、改善が進まない。 |
■心得まとめ
「誤った価値観に染まると、真実は逆さに見える」
知性が暗質に染まると、本人には気づけぬまま、
悪しき行動や思想を「正しいこと」として信じてしまう。
このような時代にこそ、正しく見る力=知性の純化が求められる。
『ギーター』は、知性の明晰さこそが魂の羅針盤であると教える。
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