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■引用原文(日本語訳)
「人が果報を期待せず、執着を離れ、愛憎なく定められた行為をなす時、それは純質的な行為と言われる。」
(バガヴァッド・ギーター 第18章 第23節)
■逐語訳
人が、行為の結果(果報)を期待せず、
その行為に対する執着(アースティ)を手放し、
好ましい・好ましくないという感情(愛憎)にとらわれることなく、
義務として定められた行為(ニヤタ・カルマ)を実行する場合、
それはサットヴァ(純質)に属する行為と呼ばれる。
■用語解説
- 果報を期待せず(アーファラーカーンクシー):行為の報酬や見返りに心を奪われない態度。
- 執着を離れ(アナスィッタハ):自我意識や結果への固執を手放すこと。
- 愛憎なく(ナドヴェシュタナティ):感情的好悪に左右されない。冷静で中立な態度。
- 定められた行為(ニヤタ・カルマ):状況・立場・責任に応じて、なすべきとされる義務的行為。
- 純質的行為(サットヴァ・カルマ):心が清らかで、欲や感情に曇らされていない行動。
■全体の現代語訳(まとめ)
人が、自分の役割として定められた行為を、
見返りを求めず、感情に支配されず、淡々と誠実に果たすとき、
その行為は**純質的(サットヴァ)**であり、魂を清める力を持つ。
それは執着から自由な、高次の行動のかたちである。
■解釈と現代的意義
この節は、**「行為の純度は、動機と姿勢で決まる」**という教えです。
成功や評価、好き嫌いに左右されず、
「なすべきことを、なすべきように」果たす生き方こそが、内面の成熟を示します。
それは、自己と世界との調和の中に生きるあり方でもあります。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 実務での適用例 |
---|---|
プロフェッショナリズム | 結果や評価に執着せず、求められる業務を誠実にこなす姿勢は、周囲から深い信頼を得る。 |
リーダーシップ | 感情的な好悪で行動を左右せず、部下の育成・チームの安定に尽力するリーダーは、長期的に尊敬される。 |
ストレス管理 | 見返りを求めず「やるべきことに集中する」姿勢は、結果に一喜一憂せず心を安定させる。 |
意思決定 | 公平で静かな判断力をもって「本当に今なすべきこと」を選べるようになる。 |
■心得まとめ
「なすべきを、静かに、清く行う」
真の行為とは、結果に左右されず、感情に流されず、義務として誠実に果たされる行為である。
『ギーター』は、それを純質(サットヴァ)の行為と呼び、魂の自由と調和への道とする。
この静かな行動力こそが、人生と組織を支える土台となる。
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