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『自分がすべてをやっている』という思い込みが愚かさを生む


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■引用原文(日本語訳)

「このようであるが、単なる(純粋の)自己を行為の主体と見る人は、その知性が不完全であるから、愚かにも〔正しく〕見ないのである。」
(バガヴァッド・ギーター 第18章 第16節)


■逐語訳

このように(五つの要因によって行為が成り立つことが真実であるのに)、
ただ**純粋自己(アートマン)**を、行為の唯一の主体と考える者は、
知性(ブッディ)が未熟であり、
愚かにも現実を正しく見ていないのである。


■用語解説

  • 純粋自己(アートマン):変わらぬ自己、本質的存在。通常は「行為を超えた観照者」であり、実際の行為に関与しない存在。
  • 行為の主体(カルター):行為をしている者。ここでの誤りは、「アートマン=行為者」と誤認すること。
  • 知性が不完全(アヴィチャーラ・ブッディ):識別力が欠け、現象と本質を混同する状態。
  • 〔正しく〕見ない(ナ・パッシャティ):現実を洞察できず、表層の理解にとどまっている。

■全体の現代語訳(まとめ)

行為が五つの要因によって成立するという真実を無視して、
「自分(アートマン)がすべてをやっている」と思い込む者は、知的にも霊的にも未成熟である。
彼らは現実の構造を正しく理解しておらず、「自己=すべての原因である」という誤った自己肥大の幻想に囚われている。


■解釈と現代的意義

この節は、**「自分の力で全部やった」「私の意思で世界は動いている」**という傲慢な自己中心的視点を戒めています。
人間の行動は、身体・環境・道具・周囲の人々・見えない力によって成り立っており、「私だけの手柄」など存在しない。
自己を正しく位置づけることが、知性と精神の成熟につながる――それがこの教えの核心です。


■ビジネスにおける解釈と適用

観点適用例
リーダーシップと謙虚さ「自分がすべてを動かした」という発想は、チームを軽視し、失敗の原因ともなる。協働こそが成果の本質。
成果への誤認識プロジェクト成功を「自分の能力」のみとするマネージャーは、他要因を無視し、再現性を損なう。
育成と視座の育成若手に「すべては自分の責任」だと思わせすぎると、燃え尽きや無力感を助長する。全体構造の理解が必要。

■心得まとめ

「行為は私ひとりでなされたものではない」
『ギーター』は言う。「私がすべてをやっている」と考えるのは、知性の未熟さに過ぎない。
本当に賢い人は、自分を構成要素の一つと見なし、協力・環境・運命をも含んだ全体像で世界をとらえる。
その視点こそが、謙虚さと力強さを併せ持つ真のリーダーシップの源である。

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