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■原文
アルジュナは言った:
「未曾有のものを見て、私は喜んでいる。
しかし、私の心は恐怖に戦慄く。
そこで神よ、私に前と同じ姿を示して下さい。お願いです。神々の主よ。世界の住処よ。」
(第11章 第45節)
■逐語訳(一文ずつ)
- 未曾有のものを見て、私は喜んでいる。
→ この世に類を見ない、かつて誰も見たことのないあなたの宇宙的な姿を見て、私は心から感動し、歓喜しております。 - しかし、私の心は恐怖に戦慄く。
→ しかし一方で、そのあまりに壮絶で恐ろしい姿に、私の心は恐れに打ち震えています。 - そこで神よ、私に前と同じ姿を示して下さい。お願いです。神々の主よ。世界の住処よ。
→ どうか、私が親しんでいた人間の姿のあなたを、もう一度お見せください。
→ あなたはすべての神の主であり、全世界のよりどころです。
■用語解説
- 未曾有のもの:神クリシュナの宇宙的形相(ヴィシュヴァルーパ)。千の顔、無数の腕、口、眼を持ち、時空を超越した存在。
- 戦慄(せんりつ)く:畏怖や恐怖によって震えること。
- 前と同じ姿:四本の腕を持つヴィシュヌ神としての慈悲に満ちた姿、または人間としてのクリシュナの姿。
■全体の現代語訳(まとめ)
私はこの世界でかつて見たこともない、あなたの驚くべき姿を見て喜びに打たれました。
しかし、その壮絶な姿に、私は恐怖に打ち震えています。
どうか、以前の親しみある姿に戻っていただけませんか。
神々の主であり、この世界の拠り所であるあなたに、お願い申し上げます。
■解釈と現代的意義
この節は、アルジュナの**「感動」と「恐怖」という相反する感情の同居を描いています。
彼は神の絶対的な形(ヴィシュヴァルーパ)に驚嘆しながらも、同時にそのあまりの超越性に人間としての限界を感じ、親しみある姿を求める**のです。
ここには、絶対者への信仰と、個としての心の安寧を求める心理が同時に表れています。
■ビジネスにおける解釈と適用
- ビジョンは圧倒的すぎても伝わらない
→ リーダーが偉大な目標や大きな構想を提示するとき、それがあまりに壮大すぎると、部下は恐れや戸惑いを感じる。共感可能な姿で語る必要がある。 - 感動と恐怖は紙一重
→ カリスマ性や影響力は、魅力的であると同時に、圧迫や不安をも生みうる。相手の立場に立ち、「親しみやすさ」と「尊敬」をバランスさせることが重要。 - 信頼関係の基礎は「安心感」
→ どれほど能力があっても、人が安心して相談・共感できる雰囲気がなければ真のリーダーにはなれない。
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