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■原文
アルジュナは言った。
「前方から、また後方から敬礼。すべての方角から敬礼。
一切者よ。あなたは無限の力と無量の勇猛さを持ち、一切を満たしている。
それ故、あなたは一切者である。」
(第11章 第40節)
■逐語訳(一文ずつ)
- 前方から、また後方から敬礼。
→ あなたの姿の前面からも背後からも、私は敬意を捧げます。 - すべての方角から敬礼。
→ 東西南北上下すべての方向から、あなたに拝礼します。 - 一切者よ。
→ あらゆるものを包含する存在よ。 - あなたは無限の力と無量の勇猛さを持ち、
→ あなたは計り知れない力と果てしない勇気を備えています。 - 一切を満たしている。
→ 宇宙の隅々まで、あなたの存在が行き渡っています。 - それ故、あなたは一切者である。
→ ゆえに、あなたはあらゆるものの本質であり、すべてを統べる存在です。
■用語解説
- 敬礼(ナマハ):サンスクリットで「頭を垂れる」「降伏する」の意。深い帰依と敬意を意味する。
- 一切者(サルヴァ):万物の総体、全存在を指す語。
- 無限の力(アナンタ・ヴィーリヤ):果てしない力、宇宙的なパワーの象徴。
- 無量の勇猛さ(アパリミタム・テージャス):測りがたい戦闘力や精神的輝き。
- 一切を満たす(サルヴァム・サマープヌシ):全宇宙に偏在していること。
■全体の現代語訳(まとめ)
あなたに、前からも後ろからも、あらゆる方角から敬礼いたします。
あなたは全存在を統べるお方。
あなたには無限の力と計り知れない勇気があり、
この世界をすべて満たしておられます。
それゆえに、あなたはまさに「すべてそのもの」なのです。
■解釈と現代的意義
この節は「遍在性」「全能性」「絶対的帰依」を象徴しています。
空間的なあらゆる方向、そして概念的にも「すべてにおいてあなたが中心である」という悟りが、アルジュナの心に生まれている様子が描かれます。
これは、真理や存在の本質が“あらゆる場所・局面に宿っている”というヴィジョンであり、宗教的帰依の極致ともいえます。
■ビジネスにおける解釈と適用
- 「全方位的なリスペクト」は、信頼構築の鍵である。
→ 社内外の利害関係者に対して、一方的でなく多面的に敬意と理解を示す姿勢が重要。 - 「あらゆる場面に本質が宿る」視点が、戦略を深くする。
→ ブランドやビジョンは、プロダクトだけでなく、言動・制度・デザイン・顧客体験の隅々に現れる。部分最適でなく全体最適の視点が必要。 - 「全体性」と「中心軸の一貫性」の両立が重要。
→ 混沌とした状況でも、核となる理念や原理が全体を満たす構造が持続性を生む。
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