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■引用原文(第11章 第5節)
聖バガヴァット(クリシュナ)は告げた。
「アルジュナよ、見よ。
幾百、幾千とある、神聖にして多様なる私の姿を。
さまざまな色と形を持つ、私の姿を。」
—『バガヴァッド・ギーター』第11章 第5節
■逐語訳(一文ずつ訳す)
- 聖なる主(バガヴァーン)は言った:
- 「アルジュナよ、見なさい。
- 幾百、幾千という、神聖で多様な私の姿を。
- 色と形をさまざまに変える、私の姿を。」
■用語解説
- 幾百幾千(シャタシャ、サハスラシャ):数えきれないほどの多数を象徴し、神の無限性を表す。
- 神聖にして多様なる姿(ディヴィヤーニ、ナーナーヴィダーニ):超越的でありながら多彩な姿形を持つこと。
- 色と形(ヴァルナ・ルーパ):視覚的に顕現された神の属性や力を象徴する。すなわち、さまざまな存在への具現化。
■全体の現代語訳(まとめ)
クリシュナは、アルジュナの願いに応じ、「私の神聖な本性は一つではなく、数えきれないほどの形と色を持って現れるのだ」と告げる。
宇宙の中に現れるあらゆるもの――それは実は、すべて神の多様な顕現であると示されている。
■解釈と現代的意義
この節は、「一なるものが多として現れる」というインド哲学の核心を示します。
神(あるいは真理)は単一の姿だけでなく、多様な形でこの世界に現れ、私たちの前に存在している。
見る側の心が開かれたとき、あらゆる存在の中に神性=価値=真理を見出せるという啓示です。
それは同時に、「多様性の尊重」と「内なる統一性の認識」を両立する智慧を意味します。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
多様性と統合 | 社員の個性や文化、働き方の違いを「分断」ではなく、「豊かな表現」として受け入れる。 |
組織運営 | 一つの理念(神性)を持ちつつも、各部門・人材が多様な形で表現するのを許容・活用する。 |
顧客理解 | 顧客ニーズも一様ではない。それぞれの多様性の中に本質的な共通ニーズ(価値)を見出す。 |
リーダーシップの在り方 | 統一したビジョンを保ちつつも、現場ごとに適した形で「姿を変えて」導く柔軟さを持つ。 |
■心得まとめ
「多様性の中に一つを見、一つの中に多様を知れ」
真理は、一つの形だけで現れるのではない。
人、環境、出来事――あらゆるものの中に、それぞれ異なる形で現れる。
だからこそ、違いを否定するのではなく、違いの中にある共通の本質を見抜く目が必要。
ビジネスにおいても、チームの多様性や市場の複雑性の中に「一つの理念」や「一つの使命」を見出すことで、
ブレない軸を持ちながらも柔軟で強い組織・個人になれるのです。
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