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■引用原文(第10章 第1節)
アルジュナはたずねた。
「私への御好意から、あなたは『自己に関すること(アートマンに関する智慧)』と呼ばれる最高の秘密を説かれた。それにより、私の迷妄は去った。」
—『バガヴァッド・ギーター』第10章 第1節
■逐語訳(一文ずつ訳す)
- アルジュナは言った:
- 「あなたの恩寵によって、
- あなたが語られた“自己(アートマン)に関する最も深遠な秘密”によって、
- 私の迷妄は消え去りました。」
■用語解説
- 自己に関すること(アートマ・ヴィディヤー):魂(アートマン)の本質とそれが神(ブラフマン)と一体であるという智慧。
- 最高の秘密(パラム・グヒヤム):限られた者だけが知ることを許された、自己と宇宙の真理に関する究極の教え。
- 御好意(アナグラハ):神(クリシュナ)の慈愛と恩恵。アルジュナへの個人的な信頼と導き。
- 迷妄(モーハ):無知によって生じる迷い、自己と世界の本質に対する錯覚。
■全体の現代語訳(まとめ)
アルジュナは、神であるクリシュナから「自己の真実」に関する深い教えを受けたことに感謝し、その結果として自らの混乱や迷いが消え去ったと告白している。
つまり「自分が何者であるか、なぜ生きるのか」という問いに対して、内なる理解が芽生え、心が明晰になったのである。
■解釈と現代的意義
この章句は、真の学びや導きは「外の知識」ではなく、「自分自身の本質(内なる自己)」に気づかせるものだという真理を伝えています。
アルジュナが体験したように、人は苦悩や迷いの中にあっても、正しい教えと信頼できる導き手によって、内なる自己への理解に目覚めることができるのです。
この節は、人生の迷いが「内面の無知」から来るものであると示し、「本質を知ること」が心の自由をもたらすと教えています。
■ビジネスにおける解釈と適用
観点 | 適用例 |
---|---|
自己理解 | 表面的なスキルや役職ではなく、「自分は何を大事にしているか」を知ることで迷いが減る。 |
リーダーシップ | 部下や仲間に「答えを与える」のではなく、「気づきを促す」ことで成長を導ける。 |
キャリア選択 | 自分の本質(価値観・志向)に沿った選択をすることで、迷いのない決断が可能となる。 |
教育・育成 | 表面的なノウハウではなく「なぜそうするのか」という根本理解を育てることで、持続的な成長が促される。 |
■心得まとめ
「真実を知れば、迷いは消える」
人は、外の情報や変化に振り回されがちですが、自分の内なる本質に目覚めたとき、迷いは静かに消えていきます。
知識や学びの本質は、問題の解決ではなく、自己への理解を深めること。
ビジネスにおいても、自分が何者で、何を信じて行動するのかが明確になれば、どんな選択もブレなくなり、周囲への影響力も高まるのです。
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